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新緑の森が似合う春の野草
ニリンソウ

キンポウゲ科
Adonis flaccida
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 北海道〜九州の山野に生える多年草で、新緑が目にまぶしい森の中でしばしば群生する春の野草。5月、茎の先に直径2センチほどの白色花を上向きに1〜3個つける。名前は二輪草だが、ひとつの茎に二輪咲くことが多いというだけで例外もあってひとつしか付かないこともあれば3〜4輪付くこともある。中心には多数の雄しべと雌しべがあり、花弁状の白い萼片は気温が上がると開き、下がると閉じる。
 また根生葉は長い柄をもち3全裂し、茎には柄のない3個の葉が輪生してつき、果実は多数のそう果が集まった形をしている。イチリンソウ属には、似た名前のイチリンソウとサンリンソウもある。一輪草、二輪草、三輪草という名前は覚えやすく、サンリンソウを除けば、比較的知名度は高いようである。これら3種は名前も姿も似ているが、イチリンソウだけは直径4センチもある白花をつけるので見間違えることはないだろうが、ニリンソウとサンリンソウはまさに双子だ。見分け方は、茎につく葉に柄がないのがニリンソウ、あるのがサンリンソウだ。またサンリンソウはやや標高の高い場所に自生し、ニリンソウほど群生しない。

 ところで、このイチリンソウ属というのは、キンポウゲ科の中でも形態の変異に幅があることで知られる。確かに稀にずいぶん個性的なものを発見することがある。花びらに見える白い部分は萼片にあたるが、この萼片にはしばし変異が見られ、ニリンソウの場合は萼片が緑色になった品種・ミドリニリンソウのほか、雄しべが弁化して半八重咲きになった品種・ギンサカズキイチゲや完全に八重咲きになった品種・ヤエザキニリンソウもある。普通のニリンソウもよく観察すると、萼片の枚数はバラバラだ。ある調査によると、萼片数5〜7個が多く、3〜9個と幅があったという。

関連情報→本サイト植物記「八重咲き」「イチリンソウ」「サンリンソウ」「ミドリニリンソウ



北アルプス・徳沢のニリンソウ群生



上高地・明神〜徳沢間のニリンソウ群生。


春の奥秩父・両神山の登山道沿いに咲くニリンソウ(左)。萼片を1枚取り去ってみた。中心に並ぶ雌しべと多数の雄しべからなる花のつくりがわかる。長野県大町市(右)。


若芽は山菜として利用するが、毒草のトリカブトのそれと酷似しているので、花がないうちは利用しない方が賢明かもしれない。栃木県佐野市(左)。萼片の数は3〜9個と個体差がある。萼片が5枚のもの(中)と7枚のもの(右)。


萼片の先に赤みが差した個体。ベニザシニリンソウと呼ばれることもあるようだ(左)。萼片が緑色になるミドリニリンソウ。場所にもよるが、群生地で探せば意外と見つかる(中)。ギンサカズキイチゲと呼ばれる八重咲き品(右)。

  
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