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大振りで華やかな姿は園芸植物もびっくり
ヤマユリ

ユリ科
Lilium auratum
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 本州近畿地方以北に分布するユリ科ユリ属の多年草。7〜8月に大振りな白色の花を横向きにつける。ひとつの花被片は長さ10〜18センチもあり、黄色い筋と赤褐色の斑点が見られる。花には強い芳香があり、遠くからでもその存在がわかるほどだ。正真正銘の野草なのに、これほど華やかで香りも強ければ、華やかさが売りの園芸植物の立つ瀬がない。

 確かに日本に自生する野草の中でも見栄え抜群といえるが、実はヤマユリに限らず、日本産ユリの美しさは世界的に見てもトップレベルなのである。それを裏付けるような次のような話もある。幕末、来日した西洋人たちは、日本の野生ユリの美しさに驚嘆し、たちまち人気は爆発。鱗茎は高値で取り引きされ横浜港から輸出されるまでになった。その後、日本産のヤマユリやカノコユリなどを交配して多くの園芸品種が作出された。園芸の世界で、「オリエンタル・ハイブリッド」と呼ばれるユリは、すべて日本産のユリを親として作られたものである。ちなみに有名なユリの園芸品種「カサブランカ」もそのひとつだ。

 なおヤマユリといえば、神奈川県の花にも指定されている。私は現在、神奈川県に住んでいるが、ヤマユリが咲く夏に神奈川県の山間部に行く機会がないせいか、県内で見た記憶は数えるくらいだ。むしろ他県で見かけることの方が圧倒的に多い。一昨年は山形県の山村を車で抜けた時、田んぼや畑に囲まれた小さな丘の上にヤマユリが何株も花を咲かせていた。ひとつの株に4つも5つも花が咲いていて、いかにも重そうだったが、それだけ見事だった。思わず車を停めて撮影に専念してしまった。 



ヤマユリ。その美しさに見とれてしまう。埼玉県滑川町・武蔵丘陵森林公園にて。



丘の上に咲くヤマユリ。山形県小国町。



崖から下垂して先端に2輪を咲かせたヤマユリ。千葉県館山市。


 
葯のアップ。花につられて、うっかり近づこうものなら衣服に赤褐色の花粉が…。一度着くと、なかなか取れないから注意した方がいいかも(左)。果実/福島県常葉町・鎌倉岳(右)。



  
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植物記