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その姿はまさに「金黄花(金光花)」…
キンコウカ

ユリ科
Narthecium asiaticum
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 キンコウカは北海道と本州中部以北の山地の湿原や岩の隙間などに生えるユリ科キンコウカ属の多年草。漢字では金黄花もしくは金光花と書き、その由来はいうまでもないだろう。夏の湿原ではしばしば群生するので、目にする機会も多い。花は径1.5センチで細長い花被片6枚からなり、雄しべの花糸には縮れた毛が密生している。花序では、右下の写真のように開花した花が下にあり、蕾が上にある状態のものを見かけることが多く、おそらく花は下から上へと順次咲いていくのだろう。確かにキンコウカは総状花序なので無限花序(求心性花序ともいい、つまり下から上に向かって咲いていく花序のこと)のはずなのだが、秋田県の山で見かけたキンコウカはなぜか逆になっていた。何らかの環境要因で例外となってしまったのか、それともキンコウカ花序の開花方向は一定していないのか、私はまだ答えを知らない。なお、根生葉は、表側を背にして中筋から二つ折りになっている。
 ところで、キンコウカと名前がよく似た植物にコウリンカがある。両者は初心者がよく間違える紛らわしい名前の好例。さすがに今は間違えないけど私も花の名前を覚え始めた頃には、何度も「あれっ、どっちだったかな」と迷ったこともある。コウリンカはキク科で夏の山地草原などで見かける橙色の花。漢字では紅輪花と書くので、車輪状にも見えるコウリンカの花と漢字の名前をだぶらせて覚えておけば、迷った時にすぐに答えが出よう。

関連情報→本サイト植物記「コウリンカ



山の中の湿原に人知れず咲くキンコウカ。群馬県尾瀬・大清水平にて。



尾瀬ヶ原・下田代十字路付近に群生するキンコウカ。背後の雲に隠れている山は燧ヶ岳。


キンコウカの花。雄しべの花糸には縮れた毛が密生している。新潟・長野県・苗場山にて(左)。根生葉のつき方。群馬県・尾瀬ヶ原(右)。



秋、果実になった姿。福島県尾瀬・燧ヶ岳にて。



  
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