尾瀬ヶ原で見つかった
オゼコウホネ
スイレン科
Nuphar pumilum var. ozeense
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スイレン科コウホネ属に属する多年性の水生植物。ユーラシア北部に広く分布し、日本では北海道と本州・東北地方に見られるネムロコウホネの変種。母種の柱頭盤が黄色なのに対して、本種は深紅色をしているのが特徴で、沈水葉が細長く、柱頭の数が少ないとの指摘もある。北海道と本州の一部湿原や湖沼に分布し、本州では尾瀬ヶ原と月山の弥陀ヶ原にしかないというのが定番情報だが、実は秋田県の複数の一部湖沼にも生育している。
秋田県の自生地では、柱頭盤がほとんど淡黄色でわずかに紅色を帯びる程度のネムロコウホネに近いものから深紅色のものまで連続的な変異が観察されることから、本種の変種としての扱いに慎重な意見もあるようだ(※1)。
1994年初版発行の『日本水草図鑑』(文一総合出版)には、「分布域が異なる北海道のオゼコウホネに関しては変異の調査が必要」とある。その後、遺伝学的な研究によりネムロコウホネの複数の集団から柱頭盤が赤い個体が別々に生じて定着したことがわかっているらしい。また両種を交配させると稔性のある種子ができるとのことだ。
ちなみに発見地の尾瀬ヶ原では、本種が減っているとの指摘もあり、1954年に尾瀬ヶ原の池塘を調査したところ、ヒツジグサと本種が同じ池に生えることは稀だった。ところが1980年に再調査すると、一緒に生えている池が数多く見られたという。両種が共存すると、本種の衰退を招く可能性が考えられるが、その原因はよくわかっていないようである。人為的影響というわけでもないらしい(※2)。
※1 望月陸夫:オゼコウホネ秋田県に産す,植物研究雑誌47巻3号, 76(1972)
※2 金井弘夫:尾瀬ヶ原の池溏データベースによるヒツジグサとオゼコウホネの16年間の分布消長,植物研究雑誌77巻1号,38-46(2002)
関連情報→本サイト植物記「ネムロコウホネ」「ウリュウコウホネ」「サイジョウコウホネ」「ベニオグラコウホネ」「コウホネ」

尾瀬ヶ原で撮影したオゼコウホネ。柱頭盤が赤いのが特徴だ。

北海道ではサロベツ原野や猿払原野などの湿原や湖沼に分布する。この写真は下サロベツ湿原で撮影したオゼコウホネ。
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