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実は湿地ではなく乾燥地に生える
アヤメ
アヤメ科
Iris sanguinea
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 アヤメ科アヤメ属の多年草。北海道から九州まで分布。よく似たカキツバタやノハナショウブが湿った場所に生えることから、そのイメージに引っ張られて、アヤメも同じだと勘違いされていることがよくあるが、実は、山野の乾いた草地に生えることが多い。
 葉は、線形で長さ30~60センチ。中脈は目立たない。花茎は、中空で高さ40~60センチ。5~7月に花茎の先に直径7~8センチほどの紫色の花を1~3個付ける。外花被片の基部には白と黄色の網目模様があり、これが文目(あやめ)模様に似ていることが名前の由来だが、葉の付き方を同じく文目模様に見立てた…とする説もある。内花被片はへら形で直立し、長さ約4センチ。

 アヤメは、「菖蒲」の漢字を当てるが、古くはサトイモ科のショウブを指し、「菖蒲草」と書いて「あやめぐさ」と読んでいた。万葉集で大伴家持が詠んだ「霍公鳥待てど来鳴かず菖蒲草玉に貫く日をいまだ遠みか」の「菖蒲草」とは、本種ではなくサトイモ科のショウブである。そのため、アヤメ、ショウブ、ハナショウブの間には、ずっと混乱がある。
 属名のIrisは、ギリシャ神話で天と地を結ぶ虹の女神イーリス(英語読みではアイリス)に由来する。 

関連情報→本サイト植物記「ヒオウギアヤメとシガアヤメ」「カキツバタ」「ノハナショウブ



外花被片の文目模様が美しいアヤメ。山梨県南アルプス市・櫛形山。



かつて櫛形山はアヤメの大群生地として有名だったが、シカの食害で壊滅。その後、少しずつ回復しつつあるが、まだ元に戻ってはいない。写真は、その群生が健在だった1997年に撮影。



  
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