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試験管ブラシのような花序
ウワミズザクラ
バラ科
Padus grayana
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 バラ科サクラ属の落葉低木。漢字では、「上溝桜」。サクラのなかまと同じサクラ属とする見解とサクラ属からウワミズザクラ属を分ける見解がある。ただ前者の場合は、サクラ属ウワミズザクラ亜属とされる。ウワミズザクラ亜属の本種やシウリザクラ、イヌザクラは、総状花序になるのが特徴である。
 北海道西南部~九州に分布。日当たりのよい山野に生え。高さ10~15メートルになる。樹皮は灰色~暗紫褐色で、横に皮目が入り、傷つけるとクマリンの香りがある。
 葉は互生で長さ8~10センチの卵形~楕円形で、先は尾状に尖り、基部は円形。縁には細かい芒状の鋸歯がある。ほかのサクラと同様、葉身基部に蜜腺がある。
 4~6月に長さ10センチの総状花序を出し、直径約6ミリで雄しべが目立つ白い花を多数咲かせる。夏には核果となり、赤色から黒色に熟す。
 蕾を塩漬けにしたものを杏仁子(あんにんご)と呼び、主に新潟県で食用とされる。

 本種は、山でよく見かけ、珍しくはない。一方、よく似たシウリザクラは、葉の基部が心形になるので本種と区別はしやすいが、なぜか私の場合、縁がほとんどない。

関連情報→本サイト植物記「サクラの蜜腺



まさに試験管ブラシのような総状花序が美しいウワミズザクラ。福島県只見町・大曽根湿原で。



ひとつの花に雄しべは約30個もあり、余計に「ブラシの毛」のようだ。この花序は、花の数が少なく、花序としてはやや短い方。通常はもっと花の数が多くて花序も長い。長野県松本市・上高地。



6月中旬の若い果実。群馬県沼田市・玉原高原。


  
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