庚申山など限られた山の岩壁に生える
コウシンソウ
タヌキモ科
Pinguicula ramosa
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最初の発見地で名前の由来にもなった庚申山をはじめ、男体山、女峰山、雲竜渓谷、袈裟丸山など、日光・足尾周辺のごく限られたエリアのみに分布するタヌキモ科ムシトリスミレ属の食虫植物。
明治23年(1890)8月、のちに東京帝国大学植物学教授となる三好学は、庚申山でムシトリスミレ属の1種と思われる未知の植物を採集し、ムシトリスミレと比較した上で、花を見ないまま新種として発表した。のち上述した通り、周辺の山々でも次々に見つかり、近年も新たな自生地の報告がある。
花茎の先に長さ1〜1.5センチの淡い紫色をした仮面状花を付け、後には黄色い距がのびる。花期は6月中旬〜下旬。
花茎は普通は1本だが、2本に枝分かれすることもあり、開花後に少しずつのびて、花が終わると直立し、果実が熟すると岩に触れて種子を散布する。つまり、そのまま下に種子を散らしていたのでは、群落は年々下へ下へと移動してしまうので、それを防ぐ巧みな戦略といえる。同様のしくみは、やはり岩壁に生えるイワタバコでも見られる。
また葉の表面や花茎には粘液を分泌する腺毛がびっしりと生え、これで虫を捕らえる。わかりにくいが、葉には柄がある。
庚申山の自生地は、険しい岩壁を縫うように続く「お山巡りコース」の途中にあり、しかも小さな植物なので撮影には苦労させられる。前回、1994年の訪問時は低い場所には1株もなく、生えていたのは高い位置ばかりで、持参した望遠レンズでは思うように引き寄せられなかったのだが、今回、再訪すると低い位置にもあってアップ撮影も可能となった。
関連情報→本サイト植物記「食虫植物」「ムシトリスミレ」
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庚申山の岩壁に生えるコウシンソウ
S字状の花茎にも腺毛が生え、補虫葉だけでなく花茎でも虫を捕らえる。花期の後半だったため、この株の花茎は、やや長めになっている
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花は距があるところも含めて、スミレによく似ているが、あくまで合弁花である。また花冠の下部裂片には黄色の斑紋があり、花冠内部には毛が密生している
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葉の縁は表側に湾曲し、表面には腺毛が密生する。その粘液によって虫が捕まって栄養分となる
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