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一見、スミレ似の食虫植物
ムシトリスミレ
タヌキモ科
Pinguicula vulgaris
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 スミレに似た花を付けるので、名前に「スミレ」が用いられているが、スミレのなかまではなく、タヌキモ科の多年生食虫植物である。北海道、中部地方以北の本州、四国の山地の湿った岩壁や草地に生える。
 根元に数枚の葉がロゼット状に広がり、葉の表面にはびっしりと腺毛があり、粘液を分泌して虫を捕られ養分を吸収する。紫色の花は、花茎の先に1個付き、花冠の喉には腺毛が生える。花期は7〜8月。
 本種の変種に三重県・台高山脈で発見され、1997年に報告されたイイタカムシトリスミレ( P. vulgaris var. floribunda )があるほか、同属のなかまとして栃木県日光市の庚申山や雲竜渓谷などに分布するコウシンソウ( P. ramosa )がある。

関連情報→本サイト植物記「食虫植物」「コウシンソウ



花は、後に距まであってスミレによく似ているが、スミレのように5個の花弁から構成されているわけではなく、ひとつの花冠が切れ込んでいるだけである。長野県小諸市・黒斑山。



長野県長野市・戸隠山。



水がしたたる岩壁に点々と生えるムシトリスミレ。長野県長野市・戸隠山。



ムシトリスミレは、草むらの中に生えることも多い。長野県山ノ内町・裏岩菅山。



横から見た花。後には細長い距が突き出す。北海道夕張市・夕張岳。



花冠内側の下部には白い腺毛が生える。まるで半透明のビーズ6〜7個を連ねたような形をしているのがわかる。長野県山ノ内町・裏岩菅山。



葉の表面から分泌される粘液によって捕らわれた虫。長野県長野市・戸隠山。



葉の表面のアップ。白い点々が粘液を分泌している腺毛。ところで葉の縁がめくれ上がっているのは、粘液で十分に捕まえられなかった虫が逃げにくいようにとか、あるいは養分を吸収中の虫の死体が、雨で流れ落ちないようにという意味でもあるのだろうか。北アルプス・八方尾根。



  
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