Nature
動物記
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初夏の奥日光を演出する鳴き声
エゾハルゼミ
Terpnosia nigricosta
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 先日、奥日光・小田代ケ原でのこと。撮影していて、ふと、たった今通り過ぎた木道の方に目をやると、あとからやってきたハイカーが、屈み込んで木道にカメラを向けている。次の人もなぜか同じようにカメラを構える。何を撮ってるんだろう。2本の木道の間に花でも咲いていたのかな。誰もいなくなってから戻ってみたが、花らしいものはない。しばらくあたりを見回して、木道の上に1匹のエゾハルゼミがいることに気づいた。だが、これほど人が側を通っても逃げないということは、どうも元気がないらしい。このままでは、セミがいることに気づかないハイカーにペチャンコにされてしまうので安全な場所に移動させようと、そっと指を出した。前項のクロアゲハのように積極的には載ってこなかったが、羽の後ろを少し押すと指の上に載ってきた。そこで、このエゾハルゼミもクロアゲハと同じように指にとまらせたままデジカメを接写モードにして記念撮影。
 このあと近くのミズナラに止まらせたところ、なぜかどんどん上へ上へと移動。次第に幹の色と模様の中に溶け込んで、少し離れるとどこにいるのかわからなくなってしまった。これもセミが進化の過程で獲得した保護色というわけだろうか。それを思うと、どうしてアブラゼミは捕食されるリスクのある、あの濃い色の羽を選択したのか、という疑問も湧いてくる。
 ところでエゾハルゼミといえば、初夏に「ミョーキン、ミョーキン、ケケケ…」と鳴くセミ。最後の「ケケケ…」というのがカエルの鳴き声のように聞こえるので、そう勘違いしている人も多いそうだ。そういえば、この写真を撮った日も父親らしき男性の解説に「へぇー、あの鳴き声はカエルなんだ〜」と感心している家族連れがいた。おい、おやじ、ウソを教えてんじゃねぇぞ。

関連情報→本サイト動物記「セミ」「クマゼミ」「ヒグラシ




奥日光・小田代ケ原で遭遇したエゾハルゼミ



エゾハルゼミ♀。長野県長野市・戸隠高原。


 
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