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その鳴き声は夏にかかせない
セミ

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 種類に関わりなく、セミの鳴き声は夏に似合う。セミが鳴き始めると夏が来たことを実感するし、声がしなくなると秋の到来を予感させる。かんかん照りの夏の朝、激しく鳴くアブラゼミの声も嫌いじゃないが、朝方や夕暮れ時に涼しげに鳴くヒグラシの声が一番好き。広島市にある実家の周囲には木が多く、子供の頃からアブラゼミの天国だったが、今もそれは変わらない。だが、子供のころはいなかったのに数年前からはヒグラシの声もするようになった。ヒグラシファンの私としてはうれしい限りだ。

 今年の夏の夕方のこと、実家の窓の下に羽化途中のアブラゼミがゴロンと横になっていたのを偶然見つけた。普通は、深夜から早朝のころに木の幹などにつかまって羽化するのだろうが、なぜか地面に横になったまま、半分ほど身体を出していたところだった。おそらく家の壁につかまって羽化しかけたところ風にあおられて落ちてしまったのだろう。このままではアリの餌食になってしまうので、拾い上げて近くに庭木に捕まらせようとしたのだが、すでに羽化しかけているので足で捕まることもできない。仕方ないので、枝の股になったところに横にして置いた。夜になって見に行ったところ、うまく抜けだしてすぐ下の幹に捕まって羽をのばしているところだった。その後も何度か見に行ったが、次第に羽も正常に広がり無事に羽化が進んでいることがわかった。しばらくして行くとその姿はなかった。羽も乾いて、どこかに飛んでいったのだろう。

 また高校生のころにも羽化途中のセミを拾ったことがある。しかしそのセミはなんらかの原因で羽化に失敗したらしく、半分出たところですでに身体が乾いてしまっていた。そのままにしておくのもかわいそうなので、時間をかけてピンセットで殻から出してやったが、羽は縮んだままで足をすべて出すこともできなかった。処置が終わって、木にとまらせてやったが、そう長くは生きられなかったかもしれない。

関連情報→本サイト動物記「エゾハルゼミ」「クマゼミ」「ヒグラシ


ニイニイゼミ(左)とアブラゼミ(右)。どちらも広島市 


私が救助したアブラゼミが羽化したところ(左)。実家周辺にアブラゼミに次いで多いツクツクボウシ(右)。



 
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