花の色を曙に見立てた…
アケボノシュスラン
ラン科
Goodyera foliosa var. laevis
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植物記の記念すべき600ページ目は、先日、撮影してきたアケボノシュスランを取り上げたい。9月初旬の山は、夏山と紅葉シーズンの端境期にあたり、どこの山も登山者が少ないが、そんな時期にひっそりと咲くランのひとつ。ラン科シュスラン属の常緑性多年草で、ほのかに紅色を帯びる花の色を朝方の空の色に見立てて「曙繻子蘭」と命名された。
北海道~九州の山地の落葉樹林内に生える。『日本のランハンドブック 低地・低山編』(文一総合出版)によると、北海道と本州・日本海側のものは2倍体だが、本州・太平洋側のものは4倍体とされ、やはり4倍体で九州南部や奄美大島、屋久島などに分布する母種のツユクサシュスランとの分類が「今後見直されるだろう」とある。
茎の基部は地を這い、上部は斜上し、高さ5~10センチになる。葉は4~5個が互生し、縁は波打つ。8~9月に茎頂に淡紅色の花数個を咲かせる。花はやや偏側的に付き、苞は披針形で、側花弁と唇弁、萼片はほぼ同じ長さ。唇弁の基部はふくらみ、内側には毛が生える。また背萼片と側花弁は重なり、先がわずかに合着している。
関連情報→本サイト植物記「ベニシュスラン」「ツリシュスラン」

何年か前に本種目当てで某山に登ったが、時期が早く開花個体はひとつもなかった。久しぶりに再度訪れたところ、今度はほぼベストな時期だった。写真のような見事な株もあって、リベンジした甲斐があった。

花は上から背萼片、側花弁、側萼片。唇弁はこの写真ではこれらの花被片に隠されて見えず、ほかのランのように下へ垂れない。また花序は、写真のようにやや偏側的に花がつく。

品種・シロバナアケボノシュスラン(f. albiflora)も、通常のアケボノシュスランに混じってポツポツとあった。
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