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下の花弁が長い左右相称の花
ユキノシタ

ユキノシタ科

Saxifraga stolonifera

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 本州から九州に分布するユキノシタ科ユキノシタ属の多年草で、漢字では「雪の下」と書くが、名前の由来は諸説あって、はっきりしていないようだ。牧野図鑑には「葉の上に白い花が咲くのを雪にたとえ、その下に緑色の葉がちらちら見える形を表現して名付けたものだろう」とある。ほかにも長い花弁を舌に見立てて「雪の舌」であるとか、井戸のまわりのように湿っぽいところに生えることから「井戸の下」が訛ったもの、といった説も。
 花は、左右相称の大文字形で、上の3花弁には鮮やかな斑紋があり、下の2花弁は、上の花弁よりも3〜4倍も長い。よく観察すると、かなり複雑なつくりになっていて、形といい配色といい、なかなか雅趣に富んでいる。花期は5〜6月。なお山地に生える同属のなかまであるダイモンジソウ(S. fortunei var. incisolobata f. incisolobata )は、やはり大文字形の花を咲かせることから名付けられたものだ。
 ところで鎌倉市には「雪の下」という地名がある。確かに鎌倉の古寺に似合う花だし、以前から本種に因む地名ではないかと想像していた。そこで今回、由来を検索してみるとあっさりヒット。鎌倉市の行政サイトによると、雪を貯蔵する雪屋に由来するという説のほかに、確かにユキノシタが多く生えていたからという説もあるらしい(こちらのページ参照)。どちらが正しいとしても、さすがに古都らしい風雅な地名である。

関連情報→本サイト植物記「ダイモンジソウ」「ジンジソウ



満開のユキノシタに囲まれて、お地蔵さんもうれしそうに見えた。栃木県佐野市



岐阜県山県市の林道で見かけた群生。

ユキノシタの花。花弁は5個あり、上の3個には紅色の斑点が目立ち、基部にも黄色い斑点がある。雄しべは10個。葯は淡紅色だが、やがて落ちてしまう。この写真の花では、3個の雄しべにしかついておらず、ほかは落ちたあと(写真左)。葉は、暗緑色をした長さ3〜6センチの腎円形で、葉脈にそって白い斑が入る(写真上)。

  
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