盗掘されてごく限られた場所だけに…
アツモリソウ
ラン科
Cypripedium macranthum var. speciosum
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アツモリソウは、見栄えのある特徴的な花をつけることから盗掘の対象となり、今やごく限られた場所だけでかろうじて種を継続しているのが現状だ。某県の自生地ではボランティアの監視員を常駐させてまでして守っていたが、それでも監視の目をかいくぐって盗掘されたという話も聞く。
写真のアツモリソウは、かつて某山の自生地を保護している方に菓子折持参でお願いに行き、撮影させてもらったもの。渋られるのを何とか説得し信用してもらい、最後にはお茶まで出していただき、保護の苦労話などを聞かせてもらったのが昨日のことのようだ。しかし、その数年後に亡くなられ、現在は息子さんが跡を継いで保護を続けられているらしい。
中部地方の某山では、戦後すぐのころは山中いたるところにごく普通にアツモリソウが咲いていたという。今やそれも遠い昔の夢物語である。
ただ、現在でもごくごく限られた人だけに知られ、密かに守られている自生地は各地に存在する。それを守り切れるかどうかは、いかに情報を隠すかにかかっている。それは大変重要なことだが、誰でも自由に情報を書き込めるネットというのは、こうした絶滅危惧種にとって危うい存在であることは間違いない。環境省にはこうした現状に何らかの対策をしてほしいものだし、盗掘対象となる山野草の栽培技術を研究し、大量安価に市場に出すことで山採り品の価値を下げることも必要ではないか。でもランの栽培は、一朝一夕にはいかないか…。
関連情報→本サイト植物記「キバナノアツモリソウ」「クマガイソウ」
花は径3〜5センチ。唇弁が袋状になるのが特徴のひとつで、これを平敦盛の母衣(ほろ。矢を除けるための布製の袋)に見立てた名前。確かに魅力的な花ではあるが、盗掘が犯罪であることに変わりはない。
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