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茎の節が黒っぽいのが名の由来
フシグロセンノウのなかま

ナデシコ科
Lydhnis 
miqueliana
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 フシグロセンノウはナデシコ科センノウ属の多年草。本州〜九州の山地草原や林下に生え、7〜9月に径約5センチの、なかなか目立つ朱色の花を咲かせる。茎の節は太くて黒っぽい色をしているので「節黒仙翁」とついた。
 センノウ属には、ほかに本州岡山県以西と九州に分布するオグラセンノウ(L. kuisiana)、九州のマツモトセンノウ(L. sieboldii)、北海道や本州の一部にあるエンビセンノウ(L. wilfordii)、本州中部地方以北のセンジュガンピ(L. gracillima)、北海道のエゾセンノウ(L. fulgens)がある。

 このうち自生のものを見たことがあるのは、フシグロセンノウ、オグラセンノウ、センジュガンピのみ。フシグロセンノウとセンジュガンピは割と見かけるが、オグラセンノウは岡山県新見市の鯉ヶ窪湿原で1度見ただけ。湿原管理棟の人が「今年はオグラセンノウは3輪しか花をつけなかったのに、うち1輪は花が終わり、1輪は訪問者が折ってしまい、今咲いているのは残り1輪だけだよ」という。その1輪だけでも写真に収めたいと行ってみたところ、湿原のど真ん中、距離にして5メートルくらい先にポツンと咲いていた。おまけにそこは林の中なので光量も充分じゃないし、これじゃ望遠で引き寄せても大した写真は撮れない。もちろん柵で囲まれた湿原の中にドカドカ入っていくようなことができるわけない。仕方ないので遠目に見るだけで我慢した。

 ちなみに訪問者が折ってしまった1輪は遊歩道沿いに咲いていたという。悪意はなくて偶然折れてしまった可能性もあるが、もしそうでなくて故意に折ったとしたら、まったく腹立たしい限りだ。たまに北アルプスのような高山で、折り取られて捨てられた高山植物を見かけることがあるが、これも、まるで雑草の花を手折るくらいの感覚だったのだろう。盗掘するよりかは幾分マシだが、そういう人は貴重種が自生する場所には来ないでほしいものだ。子供の行為である可能性も大きいが、そういう場所へ連れて行くとき、きちんと大人が教えなきゃね。でも大人でも理解していない人がいる現状を考えれば無理な話か。

関連情報→本サイト植物記「オグラセンノウ」「センジュガンピ



朱色の花が目立つフシグロセンノウ。広島県廿日市市・吉和冠山。



フシグロセンノウの花。直径約5センチ。花弁の基部には2個の鱗片が付属。葯は紫色。同じく吉和冠山。


北アルプス・徳本峠登山道で見かけたフシグロセンノウ(左)。マツモトセンノウ(中)と、その白花(右)。静岡県・植栽。


オグラセンノウ。自生品の写真は撮れなかったので植栽品の写真を。神奈川県・植栽(左)。センジュガンピ。北アルプス・徳本峠登山道にて。名前は中国原産のガンピに似て日光・中禅寺湖の千手ヶ浜で発見されたことによる(中)。フシグロセンノウの名前の由来。茎の節は濃い色になっている。長野県南相木村・御座山(右)。



  
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