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実は九州や中国地方では絶滅している
ニホンリス
Sciurus lis
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 ニホンリスは、比較的よく目にする野生動物だろう。昼行性なので信州や奥多摩などで登山中に見かけたことが何度もあるが、動きが早く、すぐに木の上に駆け上がったりするので、写真撮影は難しい。
 果実や若葉、昆虫などを食べ、冬期用の食料としてドングリを隠したりするが、隠した場所を忘れてしまうこともあるらしい。一方、天敵は、テンやキツネ、タカ類などである。
 東日本のフィールドを歩くことが多いと、リスは珍しい部類には入らないが、実は九州や中国地方では絶滅したと見られている。『改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物 哺乳類』(環境省編)では、LP(絶滅のおそれのある地域個体群)とされ、『改訂・広島県の絶滅のおそれのある野生生物』(広島県)では、EX(絶滅種)に分類されている。広島県では昭和30年代の文献に記録が残っているのを最後に生息情報はないらしい(※)。確かに私が目にした最も西端は、六甲山地で、中国地方のフィールドでニホンリスを見たことは一度もない。
 ところで中国からマレー半島にかけて広く分布するタイワンリスも、日本では観光用に飼育していたものが逃げ出したりして一部野生化している。例えば鎌倉ではよくリスの姿を見かけるので「鎌倉は自然も豊かだ」と思う人がいるかもしれないが、あれは野生化したタイワンリスである。

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【追記】※2021年1月20日付け中国新聞の報道によると、2020年9月に庄原市西城町でニホンリスの死骸が見つかったそうだ。また同年1〜3月に行われた安佐動物公園の調査では、福山市でも自動カメラにニホンリスが写っていたとのことなので、分布が広がっている可能性がある。


関連情報→本サイト動物記「タイワンリス」「エゾリス




八ヶ岳で見かけたニホンリス。とにかく動きが早いので、姿を現したほんのわずかな時間に数カット、シャッターを切るのがやっとだった



 
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