Nature
動物記
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実は一般の認識と違って臆病な動物
ツキノワグマ(T)

Ursus thibetanus
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 2004年は各地で出没が騒ぎになり、俄然注目を浴びたツキノワグマだが、一般のイメージとは裏腹に臆病な性質で、人間を襲うのは自分自身や子供を守るための恐怖心から出る行動だ。また山でクマを見る機会がほとんどないのは、人間よりもクマの方が先に気づいて遭遇を避けているからである。従ってヒグマと比べれば危険性は低い。
 ただ危険性もゼロとはいえない。クマが何かのエサに夢中になっている時や、沢筋でこちらの足音がかき消されているような状況では、運悪く鉢合わせする可能性もあるからだ。子グマを連れている母グマの場合はともかく、普通はクマの方が逃げることが多いと思われる。また通常は襲う前に警告行動を見せるはずだから、その間に絶対に背を向けず、ゆっくりと後退していく。急な動きや大声は逆に刺激することもあるので決してしてはいけない。それでも相手が攻撃してきた場合は覚悟を決めるしかない。クマの急所は鼻なので、石などで繰り返し殴打するのが効果的とされる。昔からいわれる死んだふりというのは、その効果は半々だそうだから、試してみるにはリスクがあり過ぎる。また過去には目の前で突然開いた傘に驚いて逃げた例もあり、それはクマ牧場での実験でも効果があるとされている。私は人が滅多に入らないような場所に行くこともあり、大抵はクマ除けスプレーを携帯している。1本1万円程度もし、3年間ほどの有効使用期限しかないが、それでも万一の時には頼りになる。

 初めてのクマとの出会いは、安達太良山中腹の沢筋に現れたのを山頂から遠望した時。双眼鏡でその姿や行動をつぶさに観察できたが、本当の意味での「出会い」を体験したのは吾妻連峰でのこと。ほとんど通る人もいないマイナーコースで、向こうも人間が来るとは思ってもいなかったらしく、かなり接近するまでお互いに気づかなかった。この時、慌てて逃げたのはクマの方。10m先まで逃げてから、こちらを伺い、追ってこないのを確かめると、足音もなくすっとヤブの中に消えた。ほかにも岩手県の湿原で数百m先にいるのを見たり、志賀高原で車を運転中、いきなり目の前の国道に子グマ2頭を連れた母クマが横断したこともあった。クマも車道が危険なのを知ってか知らずか、急いで横断していたのが印象的だった。一方、姿は見ないが痕跡だけ見つけることもある。北志賀にあるアワラ湿原はミズバショウ群生地として知られるが、夏にここを訪れると、ミズバショウがなぎ倒され、食べ残しの果実が散乱していることが多い。付近に生息しているクマにとって、ここは貴重なエサ場なのだろう。



私のツキノワグマ目撃・遭遇体験記録

1996年07月16日 正午頃
安達太良山山頂 数キロ先の中腹にいるのを目撃し双眼鏡で観察

1998年06月01日 午後
吾妻連峰・家形山中腹の登山道 5〜6mの至近距離で遭遇。クマはすぐ逃げた

2002年05月10日 早朝
岩手県岩泉町・櫃取湿原 200〜300m先にいるのに気づいて撮影(下の写真)

2003年07月31日 早朝
志賀高原・長池付近の国道 車で走行中、子連れクマが目の前を小走りに横断

2006年10月15日 深夜
長野県大町市・扇沢付近の県道 車で走行中、驚いてヤブに逃げ込む姿を目撃

2008年06月13日 早朝
岩手県釜石市・箱根峠 付近の林道で100m先にいるのを目撃。クマはすぐ逃げた

2012年06月14日 早朝
福島県某所の登山道 6〜7mの至近距離で遭遇。クマはすぐ逃げた

2017年07月06日 午後2時前
長野県長野市・戸隠山の登山道 15〜20mで遭遇・撮影(「ツキノワグマU」参照)



関連情報→本サイト動物記「熊出没注意看板」「ツキノワグマ(U)




岩手県岩泉町の山中で見かけたツキノワグマ。300mmの望遠レンズで撮影し、さらに拡大トリミングしたもの(下2点も同じ)








食痕が残るミズバショウの果実(左)と喰い荒らされたミズバショウ群生地(中)。たっぷりの食事のあとは大きな落とし物が(右)。3点とも長野県山ノ内町・アワラ湿原にて。



 
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