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出会えばじっと見つめられる
ニホンカモシカ
Capricornis crispus
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 ニホンカモシカは山で比較的よく出会う動物。名前に「シカ」とついているが、シカ科ではなくウシ科。シカ科の動物では角はオスにしかないが、ウシ科の動物ではオス・メス両方に角がある。だからカモシカに角があったからといって、その個体がオスとは限らない。
 カモシカと出会うと、野生度の高いシカのようにすぐにきびすを返して逃げたりはせず、決まって立ち止まって、じっとこちらを見つめる。たぶん自分にとって敵なのかどうか見極めているのだろう。「こいつは何だろう?見たことないぞ」とでも思っているのかもしれない。そんな時に話しかけたりすると、ますます視線をはずせなくなる。しかし、しばらくして襲ってこないのを確かめると興味が薄れるのか、振り返りもせずにスタスタと急斜面を下って行ったりする。また決まった場所に糞をするので「ため糞」ともいわれる。
 私の場合、長野県での目撃頻度が高く、あとは静岡県や埼玉県など。東北地方の山には相当足を運んでいるのに、一度も私の前に現れてくれたことがない。東北地方では、ほかの地方では見たことがない動物には結構出会っているのだが。
 カモシカは珍しくもないが、しかし出会えば、山旅にちょっとだけ色を添えられたようでうれしい。



長野県須坂市の山林で見かけたニホンカモシカ。カメラを向けてもある程度の距離があれば、あまり警戒しない

左写真は長野県栄村の山道で遭遇したカモシカ。じ〜と視線を送ってくる。中央と右写真は、長野県上田市の山で見かけた顔だけ白毛に覆われたカモシカ。見れば見るほど、完全にパンダ顔しちゃってる。たぶんコイツにはその意図はまったくないだろうけど、なかなか笑える。ここの山にはカモシカが多く、地元の人によると頻繁に出会うという。私もこの個体以外にも数頭見た。

NEW
長野県辰野町の林道で出会ったニホンカモシカ2頭。同じ写真内に収められなかったが、すぐそばにいた。ニホンカモシカは単独で見かけることが圧倒的に多く、親子以外で2頭が一緒にいるのを私は初めて見た。どちらも成獣と思われ、時期から考えても親子ではない。同性どうしは縄張りを主張して追い出すとされるので、雄雌の可能性が高いかも。10〜11月が交尾期ということと関係があるかもしれない。それにしても右写真の個体は白っぽい毛色だったのに対して、左写真の個体は黒っぽい。早朝なので、ややブレ気味なのはご容赦のほど。


三重県松阪市、台高山脈の林道に座り込むカモシカ(左)。すぐわきを車で通過したにも関わらず、逃げようともしない。車から降りてそっと近づいてみたが、まったく無反応(右)。怪我をしている様子はなく、首を動かしたりする様子に違和感はなかった。だが、車や人間が近づけば、普通は警戒するはず。病気で体調が悪いのか、理由は不明。


決まった場所に糞をする「ため糞」。志賀高原にて(左)。カモシカの足跡。群馬県・袈裟丸山にて(中)。川原の砂地に残されていた足跡のアップ。南アルプス・戸台(右)



 
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