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行方不明者の張り紙 南アルプス・易老岳登山口など

撮影年月日:2008年10月10日など

 山では、時々、行方不明者が出る。入山したまま帰宅せず、捜索によっても見つからなかった人で、おそらく圧倒的に単独行者が多いものと想像する。パーティ全員が行方不明になることは、特に冬期ではあり得るだろうが、ほとんどの場合は捜索で発見されると思われ、過去の詳しい事例までは知らないが、もしかすると、ほぼ「行方不明者=単独行者」といってもいいかもしれない。
 仮に登山道上で倒れていたら、ほかの登山者や捜索隊によって容易に見つかるはずだから、運悪く発見されにくい場所に滑落してしまったか、あるいはどこかで登山道を外れてしまい、何らかの深刻な状況に陥ってしまったのだろう。

 私が、これまで全国の登山口で見かけた行方不明者の張り紙を以下に掲載しておくが、ご家族の心情とプライバシーにも配慮し、氏名や年齢、顔写真など、個人情報に関わる部分は、当然のことながらモザイクをかけさせて頂いた。ちなみに撮影したのは2008〜2013年で、すでに張り紙は撤去されている可能性が高い。

 張り紙には、身長、体重、服装、持ち物の色や特徴、さらに連絡先として管轄の警察署電話番号(時にご家族の電話番号も)が書かれているものが多かった。中には「□月□日、○○小屋に宿泊。翌朝、小屋にザックを置いて◇◇岳山頂に登頂。昼頃に同小屋に戻り、小屋を出発したものと思われるが、その後、周辺の山小屋に宿泊した形跡はない」などと行方不明になる直前状況が詳しく説明されているものもあった。警察が作成したものが多いが、ご家族による手書き張り紙も。

 山に出かける日の朝、「じゃ、行ってきます」「気をつけてね」…みたいなごく普通の会話がご家族との間で交わされたはずだ。いつものように夕方には帰ってくることを、本人もご家族も何ひとつ疑わず…。それを思うと、ご家族の心情は察するにあまりある。

 登山者はみんな、自分が二度と家に帰れなくなる事態に陥る可能性について考えたことすらないと思うが、山で行方不明になる人は現実に存在している。各地の登山口を巡っていると、頻繁とはいえないが、時々「行方不明者の張り紙」を目にする。つまり表立って報道されることはないが、実は全国規模で見ると、ある程度の頻度で行方不明事故が発生しているということだ。

 これは、決して他人事ではない。以下に掲載した行方不明者の方々が、すでに見つかっているか、あるいは今後、見つかることを願いつつ、改めて「山の怖さ」を認識して頂くためにもご覧頂きたい。


関連情報→本サイト山岳奇譚「山で行方不明になる人



南アルプス・易老岳登山口に貼られていたもので、行方不明者2人分だが、同行者ではなく別々の時期にそれぞれ単独で入山し帰らなかった人である。一人は30代男性、もう一人は60代男性。

以下の写真全点NEW

これも南アルプス。夜叉神峠登山口にあった掲示板。張り紙すべて行方不明者を捜している内容で、5枚もあった。つまり5人分ということ。すべて別々の時期に行方不明になった人たちだ。年齢は19才から77才まで。すべて男性。中には「南アルプスに登る」と家族に伝えたあとに音信不通になった人もいて、仮にその言葉通り、南アルプスで遭難していたとしても、遭難現場が夜叉神峠を経由する山(鳳凰三山?)なのかどうかすら判明していない事例もあった。



山菜採りで山に入り行方不明になられた70代の男性。北アルプス・三股登山口で撮影。



北海道・暑寒別岳登山口にあった山スキーの遭難者情報を求める看板。



秋田県北秋田市・安の滝入口にあった張り紙。2人でキノコ採りで山に入って、どちらも行方不明に。



新潟県魚沼市・枝折峠で見かけた看板。枝折峠〜越後駒ヶ岳〜中ノ岳のどこかで遭難したようだが、こんな看板が立てられるということは捜索でも見つからなかったのだろう。遭難者は60代の女性。しかし登山歴20年で「男性よりも早く歩き健脚」とあった。こんな山のベテランでも行方不明になるのだ。みんな気を引き締めよう。



左は長野県長野市・荒倉山登山口で見かけた看板。遭難したのは50代の男性で、鬼女・紅葉の岩屋を訪れた形跡はあるものの、それ以外の遺留品や形跡は一切見つかっていないという。右は岐阜県関市・高賀山登山口で撮影したもので、遭難者は30代の男性。登山中に見かけた人がいたら、ご一報下さい、とあった。



左は神奈川県松田町・鍋割山登山口で撮影。遭難したのは60代男性。右は静岡県静岡市・竜爪山登山口で撮影。警察もかなり丹念に形跡を追っていて、路線バスの運転手や山麓住民、さらにはすれ違った登山者の目撃情報まで拾い上げていた。しかし午後1時半に別の登山者と会話して以降、足取りが途絶えている。



左は静岡県浜松市・麻布山にあった手書き張り紙。当日の服装や持ち物をイラストで詳しく説明してあった。右は兵庫県養父市・氷ノ山登山口で撮影。この方は朝6時に登山を開始し、お昼には下山する予定だったらしい。



上の3点は、すべて奈良県上北山村・大台ヶ原駐車場にあったもの。左の人は、中央の人が行方不明になった約10日後に消息を絶たれている。ただし中央の人は「登山に行く」とだけいって自宅を出ておられるので、大台ヶ原で遭難されたかどうかは不明。




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