Nature
山岳記
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青木ヶ原樹海 山梨県・鳴沢村、富士河口湖町

撮影年月日:2006年9月15日

 富士山北麓の青木ヶ原樹海は、貞観6年(864年)の富士山噴火で流れ出した熔岩の上に生育した大森林地帯。その中を縫うようにいくつかの遊歩道がのびているが、そこから一歩外れれば、千古不伐の森が広がる。そんな森だから「迷ったら出られない」というイメージも生まれ、自殺者が多いことでも知られる。
 もう十年以上前のことだが、山に行った帰り道のこと。夕刻、富岳風穴の駐車場に車を停めて、自販機で買った缶コーヒーを飲んで休憩していた。もう薄暗い頃のことで、駐車場に停まっているのは私の車だけ。そんな折、パトカーが駐車場に入ってきて、ゆっくり前を通り過ぎた。通り過ぎるとき、中をのぞき込むように見られたので、やだな〜と思ったのだが、考えてみればここは自殺の名所だった。なるほど、そういうことね。
 のちに知ったことだが、夕方、バスに乗ってひとりでやってくる人は、その目的のために来ている可能性が高いという。そんな場所だから、念のために様子を見るのは当然だろう。音楽を聴きながら缶コーヒーを飲んでいたから自殺目的じゃないと判断され、声は掛けられなかったのだろう。
 先々月、取材で初めて青木ヶ原の遊歩道を歩いてきたのだが、入口には自殺目的で訪れる人に向けてのメッセージがあったり、歩いてみて「やっぱ青木ヶ原だわ」と感じたことがいくつかあった。
 遊歩道の途中で森の奥に赤いものが見えた。何だろう? 目をこらしてみると、それは供えられた花だった。ほかにも遊歩道沿いにカップ酒が供えられていたり、「その痕跡」は点々とあった。また遊歩道に延々と置かれたビニール紐も気になった。端から端まで歩いて数分かかるほどの距離で、探索や慰霊目的で森に入る時に迷わないために持ち込まれたものとも想像するが、森の奥へのばされているわけではなく遊歩道沿いにあったのが不思議だった。
 うっそうとした森の中は空気もきれいだし貴重な自然が残されている、という気はするのだが、一方で独特な雰囲気がある森だった。樹海の中にひっそりと口を開けた竜宮洞穴でのこと。まだ買ってから3ケ月しかたっていない真新しいカメラで洞穴内を撮影していると、数カット撮影したあと急にシャッターが切れなくなった。何度押しても、ウンともスンともいわない。「取材の途中にカメラが故障とは参ったな」そう思って洞穴を出てから、もう一度押してみると、なぜか何の支障もなくシャッターが切れ、それ以降、まったく問題なく撮影を続けられた。う〜ん、何が原因なのだろう。気持ち悪〜い。

関連情報→本サイト山岳奇譚「青木ヶ原の怪


 
熔岩の上に木々が茂る青木ヶ原樹海(左)。遊歩道に延々とのびる、なぞのビニール紐
(右)。


自殺目的でやってくる人に向けたメッセージ。富岳風穴や鳴沢風穴側入口にある同様の看板には、もっとひどい落書きがされていた。こういう看板に落書きすることに何も感じない人って、どういう人なのだろうねぇ。だいたいは想像つくけどね。


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