Nature
山岳記
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冬虫夏草 山梨県・青木ヶ原樹海

撮影年月日:2006年9月15日

 前項で書いた青木ヶ原取材で冬虫夏草を見つけたので、今回はその話題を。遊歩道沿いで、ある野草の花を見つけて接写するために屈むと、すぐ近くにひょろりと苔の上にのびた菌類の子実体があるのに気づいた。見たところ冬虫夏草ではないかと感じたので、子実体の柄に沿って地中を掘ってみた。すると、やっぱり。地中のカメムシから生えていた。
 帰宅後、きのこ図鑑で調べると、カメムシタケと判明。冬虫夏草といえば、セミタケがよく知られているが、ほかにもカイガラムシ、トンボ、ハチ、アリ、オサムシなどに寄生するなかまもあるようだ。いずれもバッカクキン科冬虫夏草属に属する菌類で、属名は冬は虫だが、夏には草になるという意味。
 それにしても不思議な生活史。冬虫夏草が虫に寄生するメカニズムを知りたいものだ。胞子が昆虫に付着するところから寄生が始まるんだろうけど、セミの幼虫のように地中にいながらにして寄生されることを考えれば、地中にも眠っている胞子があるということか。当然、昆虫側には異物を排除する免疫機能があるわけだが、それにも負けない仕組みがあるんだろう。




青木ヶ原で見かけたカメムシタケ。堀り出して苔の上で撮影。黒い柄とこん棒状の頭部からなる子実体と、寄生されたカメムシ。撮影したあとは、再度元の状態に戻しておいた。


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