奇岩1 穴開き編 北アルプス・燕岳
撮影年月日:2018年7月23日
山には、「どうしてそんな姿形になったんだろう?」と不思議に感じる奇岩がある。もちろん、容易に成因を推定できる場合もあれば、できない場合もある。私がこれまで山で遭遇した、そんな奇岩をご紹介したい。いろいろなタイプがあるので、とても1ページではまとめ切れない。タイプごとに少しずつアップしていくことにする。まずは穴が開いた岩から。
本サイトでは、以前にも山岳記134「何だコレ?」や山岳奇譚「山にある不思議な岩」で穴が開いた岩を取り上げているが、最も有名な穴が開いた岩といえば、北アルプス・燕岳山頂付近にあるメガネ岩だろう。巨岩の上部にふたつの大きな穴がぽっかり開いて背景の青空が見える。硬い岩に穴が自然に開くのも奇妙に感じるかもしれないが、周辺のほかの岩と同様に花崗岩というところがミソ。
花崗岩は、石英、長石、黒雲母の3鉱物からなり、それぞれの結晶粒子が大きく、しかも各結晶の熱膨張率が異なるため、気温差が大きければ大きいほど、結晶粒子の結合が緩んで風化しやすい。しかも燕岳の花崗岩は、大天井岳の花崗岩のように緻密ではなく、これも風化につながりやすい要因とされる。
複雑な形をした岩全体の風化が進めば、場所により風化の進行に差が生まれて岩の厚みがない部分は最終的に穴が貫通してしまうこともあるのだろう。今後、風化が進めば、さらに穴が大きく広がり、「メガネ」ではなくなる可能性も高そうだ。
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燕岳のメガネ岩。燕山荘から燕岳山頂を目指すと、山頂手前にある。よく見ると、ほかにも小さな穴が開いているのがわかる。それにしても右側の「イワゴウ」という落書き。どうしてこういうことをするかね。たぶん書いた本人の名前だろうけど、こんなものを残しても、あとから来て見た人全員が「イワゴウという、どうしようもないバカが彫ったんだな」と思われて終わりだよ。ちなみにメガネ岩に登るのは禁止されている。

秩父の二子山は石灰岩の岩峰で、登山道沿いにはこんな穴が開いた岩も見られる。石灰岩には雨水に溶ける性質がある炭酸カルシウムが50%以上含まれるため、穴が開いても不思議ではないが、山岳記134「何だコレ?」で取り上げた岩は、厚みがある部分に深い穴が開いていて様子が異なる。撮影は1999年。

丹沢山地にも穴が開いた岩が知られている。大山の登山道沿いにある天狗の鼻突き岩だ。岩に直径10センチくらいの穴が開いている。おそらく人為的に開けたのだろう。撮影は2000年。
最後も人為的な穴と思われる2例。左は奥多摩むかしみちの途中にある「弁慶の腕抜き岩」。上の切れ込みも元々は穴だったが、欠損したように見える。力自慢の弁慶が開けたかのような名前で呼ばれているが、おそらく旧・青梅街道の時代に何かの目的があって、岩に鑿と金槌でふたつの穴を開けたのだろう。撮影は2001年。右は宮崎県都農町の尾鈴山・甘茶谷登山口で見かけた、直径3センチほどの、ふたつの穴が開いた岩。どう見ても人為的な穴だが、どうして路面上の岩にこんな穴を開ける必要があったのだろうか。垂直方向ならまだしも水平方向に開けるのは難しいと思うのだが。作業しやすい位置で岩に穴を開けたあとに路面上に放置された可能性はあるかもしれないが、いずれにしても謎である。撮影は2014年。
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