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山にある不思議な岩


 各地の山には、不思議な岩がある。自然の岩がたまたまそんな形になってしまったのか、それともいつの時代にか人工的な加工が施されたのか。その検証は、ちょっと横に置いといて、とりあえずどんなものか見ていくことにしよう。


相輪塔/袈裟丸山(群馬県東村)
 袈裟丸山(けさまるやま)の中腹にある自然石が積み重なった高さ18メートル、幅3メートルの岩塔だが、上の岩の方が下の岩よりも大きい不思議な組み合わせになっている。伝承によると、この岩塔はもともとは沢入地区にあり、土地の女たちから信仰を集めていたのだが、彼女たちが塔に上がるのを嫌った天狗が、一夜のうちに現在の場所に移動させてしまったという。その時、天狗は上の岩から順に運んで積み上げていったので、下の岩ほど小さい不安定な姿になったと伝えている。
 ちなみに相輪塔の足元には、数体の石像が置かれている。私はこの石像に近づいたときに、ぞわ〜と鳥肌が立った。何かあるのかないのかわからないか、かなりイヤな感じかしたのは事実だ。
 なお相輪塔近くには岩に彫り込まれた大きな寝釈迦像もある。こちらはいつ誰が彫ったのか不明で、一説には足尾銅山に送り込まれて病死した人を弔うために彫られたともいわれている。




不安定そうな相輪塔      寝釈迦像。左手奥に見えるのが相輪塔




●条溝岩/烏帽子山(広島県庄原市)
 「とっておきの自然」でも紹介した比婆山(ひばやま)の隣にある烏帽子山には、ひとかかえもある条溝岩と呼ばれる大岩がある。立方体状の岩の表面に、はっきりとした複数の並行する溝と、それに交差する一本の縦溝が彫り込まれている。これは明らかに人工的に彫られたものと思われるが、いつ、何の目的で加工されたのかはわかっていない。ただ、ひとつ興味深いのは、縦溝は比婆山山頂を指し示している点だ。山頂には日本神話のヒロイン・伊邪那美命が葬られた御稜があることから、それを示す道標のような意味があったのかもしれない。比婆山一帯には、同様に人の手が加わったと思われる岩が数多くある。



溝が彫り込まれた条溝岩(左・中)とその解説板(右)




●烏帽子岩/烏帽子山など(広島県庄原市)

 条溝岩と同じ烏帽子山にある烏帽子岩は、名前の通り烏帽子状をした巨岩で、大きな台座となる岩の上に、さらにひとまわり小さな岩を重ねた形をしている。これは自然のものともいえるが、同様の形をした岩は比婆山をはじめとして各地に点在している。私が実際に確認しただけでも次の通りだ。


1烏帽子岩/広島県庄原市・烏帽子山
2太鼓岩/広島県庄原市・比婆山
3観音岩/広島県庄原市・葦嶽山
4御守岩/広島県広島市・武田山


 実はここに挙げた以外にも、群馬県や京都府、長野県にも似た形の岩があり、いづれもふたつの岩から構成されている。これらの岩は、もともとひとつの岩だったものが、何らかの原因でふたつに割れたために、大きな岩の上に小さな岩を人為的に置いたように見えるという見方もできるが、例えば烏帽子岩の写真を見る限り、左側の縁のラインは上下の岩で連続しておらず、そうした見方に疑問を感じる。なお太鼓岩は、中が空洞になっているのか、叩くとかすかに響くことからその名前が付けられたもの。また観音岩だけは少しとんがり気味だが、見る方向によっては烏帽子岩に似ている。



烏帽子山の烏帽子岩     比婆山の太鼓岩       葦嶽山の観音岩


 ちなみに葦嶽山(あしたけやま)は、日本ピラミッドとして名前が知られる山。秋田県鹿角市のクロマンタ(黒又山)が注目されるはるか以前に、ピラミッド状の特異な姿から自然の山をピラミッド状に加工したとする説が発表された。現在では日本ピラミッドとして地元の観光スポットとなっており、登山口には「日本ピラミッド」と書かれた標識も立っている。日本にピラミッドとは突飛な感じがするかもしれないが、クロマンタでは地中レーダーの調査で、山の内部に階段状の地形があることも確認されている。また葦嶽山でも、先端に丸い穴が開けられた四角柱の石など、人工的な加工が施された岩もあり、何らかの遺跡である可能性は否定できないだろう。



葦嶽山の岩。石柱上部に開けられた丸い穴(左)と真っ平らの巨岩(右)



●続石(岩手県遠野市)
 続石は、民話のふるさと、岩手県遠野市にある不思議な岩。山岳地ではないが、静かな里山から少しばかり山の方へ上がった林の中にある。写真をご覧頂ければすぐにわかるが、実に絶妙のバランスで成立している3つの岩から構成される。伝承では弁慶が置いたとされ、遠野物語にも登場する。



上の石は幅7m、奥行5m、厚さ2mもある。左の写真赤枠内をアップにしてみると、
左側の石とはわずかな隙間があるだけで決して接してはいないのがわかる(右)






●無名のレンズ状石/姫神山(岩手県玉山村)
 姫神山の一本杉登山口から山頂へ向けて登る途中に、奇妙な岩がある。いうなればレンズのような形をした奇岩なのだが、その下にある岩も表面に盛り上がった1本のスジがある不思議な岩。こういうスジが自然にできるものなのだろうか。
 実は同じ姫神山の城内登山口からの登山道沿いにも同様の奇岩がある。やはりレンズ状の形をしており、笠のように見えることから、地元では「笠詰」または「笠詰権現」と呼ばれている。
 花崗岩は浸食されやすく、時に奇妙な形を自然に作り出すが、姫神山は花崗岩の山ではないし、こういう形が自然にできるものなのか疑問に感じる。岩石には詳しくないので、よくわからないが、素人考えでは不思議に思う。



一本杉登山コースにある奇妙なレンズ状石(左)と、その石の下にある表面に盛り上がったスジがある石(右)





●太刀割石/竪破山(茨城県十王町)
 阿武隈山地の竪破山(たつわれやま)は、太刀割山(たちわれやま)とも呼ばれ、山中にある奇岩・太刀割石に由来する。この岩は、直径7m、周囲20mもある巨岩で、真ん中で割れたように見える二つの岩が対になっている。伝説では源義家が太刀で割ったとされている。写真で見ればわかるが、確かに割れた部分は真っ平らで、しかも二つの断面はぴったり一致しているとも聞く。しかし立っている岩は、横たわっている岩に比べて直径が小さいようにも見えるが、どうなのだろう。現地を訪れたとき、その点についてよく見ておけばよかった。
 この山は雷の発生が多く、過去には山の中を横に走り抜ける稲妻が目撃されたこともあり、それが原因で割れたとする説も唱えられているそうだ。もし本当に雷で割れたのなら、割れた瞬間を見たくなるが、割れたのではないとしても不思議な形の岩ということはいえそうだ。



それぞれ違う方向から見た太刀割石。右写真に写っている私と比較すると、その大きさがよくわかる





無名の岩と天下石/大倉高丸(山梨県大月市・甲州市)
 南大菩薩にある湯ノ沢峠から大倉高丸(大蔵高丸)、大谷ケ丸を歩いたとき、大倉高丸の少し先の登山道沿いに長方形の岩があるのが目に入った。正確には2辺だけがまっすぐで、その2辺から構成される角が直角というだけだが、それにしても人工的に削ったようにまっすぐになっている。この岩は自然にできたものだろうけど、偶然にしても見事だ。岩石は結晶から構成されているから、ある方向に対して割れやすいということはあると思うが、それにしてもこれほどの大きさの岩が、これほどまでにまっすぐになるとは。
 ところで、この長方形岩の南には破魔射場山(はまいばやま)がある。珍しい名前だが、これは新年に古い太陽を射落として、新しい太陽を迎えるという古代信仰に由来するという。破魔射場山を越えると、続いて天下石と呼ばれる巨岩が見えてくる。表面がなめらかな巨岩で、なぜ天下石と呼ばれるのか、私は知らないが、この稜線には、いろいろとおもしろいものが点在している。



大倉高丸で見かけた2辺がまっすぐになった岩(左)と
天下石(右)。天下石の表面は平面ではないが、かなりなめらか。下にある石片は形が一致しているので、本体から割れて落ちたものだろうけど、なぜか色が違う。石片の方が雨に当たりやすいので、汚れがつきにくいからだろうか。



穴の開いた岩(東京都奥多摩町など)
 岩に穴が開けられた岩が、各地にある。このページの「烏帽子岩」欄でも紹介した葦嶽山の石柱も同様だ。おそらく時間をかけて人為的に開けたのだろうが、どういう意図で開けたのかなど詳しいことは不明。私が知っているだけでもほかにも以下のものがある。




奥多摩町には旧青梅街道の道をたどる「奥多摩むかし道」と呼ばれるハイキングコースがある。この沿道には穴の開いた石や岩がある。ひとつは耳神様と呼ばれる民間信仰の史跡。穴の開いた石を耳に見立て、耳の病気の時は願をかけたという(左上)。もうひとつは「弁慶の腕抜き岩」。左の写真をご覧頂ければわかるように、丸い穴が開いた岩で、伝説では弁慶が開けたとされている。
ほかに神奈川県伊勢原市の大山にも穴の開いた岩「天狗の鼻突き岩」がある(右上)。きれいに円形の穴が開いており、おそらく人為的に開けたのだろうが、労力と時間を費やして何のために開けたのだろうか。
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私は山で不思議な出来事に遭遇したことが何度かある。よく調べれば、その原因や理由は案外あっけないものなのかもしれないが、この手の話というのは、もともとその性質上、民話や昔話の類に限りなく近いものだ。だからそういう視点から読んで、ちょっとだけゾッとしてもらえれば結構だと思う。


山
譚
Nature
岳
奇
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