山で遭遇した超意外な人 神奈川県某山
撮影年月日:1984年11月23日
前項・山岳記196「山で見かけた変わったもの~情報提供呼びかけ看板~」で、山が殺人事件の遺体遺棄現場になることを書いたが、私には、もっとリアルな経験がある。どういうことかというと夜の山で、遺体を遺棄しようとしていた殺人事件の犯人と知らないまま間近に遭遇したという、今でもゾッとする経験である。
大学生の時のこと。秋に友人とふたりで箱根の山に登った。当時は今のようにネットでバス時刻表を確認することもできず、そこそこの頻度でバスはあるだろうくらいにしか考えず小田急線に乗車した。ところが最寄りの駅から登山口へ向かうバスは予想外に少なく、駅で随分待つことになり、登山口をスタートしたのは10時頃になってしまった。それでも計画通りのコースをたどったため、最後のピークに立ったのは16時頃だった。山頂にある茶店の人から「随分遅いわね」と苦言を呈され、それでも友人と一緒だったので不安も感じず、むしろ非日常感があって、ちょっとした冒険心をくすぐるような感覚さえあった。
山頂直下まで林道が通じていたので、すぐに林道に出て、ひと安心。しかし、より早く山麓に出ようと、途中からショートカットできる登山道に入ったのが間違いだった。ほどなく日もとっぷり暮れ、懐中電灯を取り出して進むが、道が林間に入ると、完全に真っ暗。今あるような高輝度LEDライトとかではなく、昔ながらの豆電球式懐中電灯が照らし出す範囲は限られるので、あまり明瞭でない登山道だと、どこに道があるのかさえ判別しずらい。道だろうと思って進んでいると、いつの間にか足元が踏み固められていないことに気づいて道から外れたとわかる。しかし真っ暗な中、元の道に戻るのも容易ではない。その度にしばらく付近を右往左往することを繰り返す。これはマズイ。下手すればビバークするハメになると思って、このまま進むのを断念。再び先の林道に戻り、林道経由で山麓に出ることにした。林道に出てしまえば、あとは時間はかかるが、そのうちバス停に着くはずだ。
友人とたわいもないことを話しながら、先ほどまでの緊張感もどこへやら。淡々と林道を歩いて行った。しばらく進んだところに赤い車が止まっていて、そばに一人の男性がいた。車の周囲をウロウロしていたのか、何かをしている様子だったのか、もはや記憶は曖昧だが、あとで友人は「手にスポーツ新聞を持っていたような気がする」といっていた。どちらにしても、こんな時間に林道で何をしているのだろう? と思ったが、特に気にもとめずに歩を進め、やがて山麓に出て無事帰宅したのだが、しばらくして友人が驚くべきことを教えてくれた。
その頃、マスコミは保険金目当てに人を殺した元刑事が逮捕されたことを報道していたが、友人はその詳しい供述内容を何かで偶然知って驚愕したというのだ。というのも元刑事は1984年11月23日の夜に遺体を遺棄しようと南足柄市の〇〇林道に行ったものの、「山の方から人が来た」ため遺棄を断念して、別の場所に遺棄したらしい。その最初に遺棄しようとした日付と場所が一致するので、林道の途中で遭遇した男性はまさにその元刑事だったことになるし、「山の方から来た人」とは我々のことになる。実はあの時。車のトランクには殺された人の遺体があったかと思うと、実に恐ろしい。運悪く車から遺体を下したところで遭遇していたら何をされたかわからなかった。まあ、単独ではなく二人だったので、ついでに口封じするにしても容易ではないだろうが、背筋が凍る経験であった。
関連情報→本サイト山岳記「山で遭遇した意外な人たち」
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最後に立った山頂からの下山道にあった鳥居。この先で林道に出て、ショートカットの登山道に入ったところでコースアウトしかけて冷や汗。林道に戻って山麓に出る途中で、究極の超意外な人物と間近に遭遇することになるとは、この時は知る由もなかった。写真は友人が撮影したもので(とりあえず私の署名を入れといた)、右下はフィルムカメラのデート機能で入った数字。少しわかりにくいが、「23 4 23」とある。つまり23日の午後4時23分ということ。デジカメしか知らない世代には、たぶんわからないと思うので、説明しといた。時代は知らないうちに進んでいるんだね。
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