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赤い池と赤い沢 宮城県栗原市・栗駒山など

撮影年月日:2002年9月14日など

 あちこちの山を歩いていると、稀に赤く染まった池や沢を遭遇することがある。おそらく土壌に含まれる酸化鉄由来の赤だろうとは思うが、まわりの緑に対して、そこだけ赤褐色を呈しているので異様に見える。

 かつて栗駒山の表掛コースを歩いた時、御沢へ出る手前、笹が覆う木立の中に赤い池が水をたたえていた。その印象的な池にカメラを向けたあと、誰もいない御沢の河原で昼飯を喰っていると、上流から単独の中年男性が降りてきて、「ここはどこですか」と聞かれて驚いた。栗駒山山頂からの下山途中で予定コースとは違うことに気づいたが、地図がないので、どのコースかもわからない。いずれ山麓に降りられるだろうとそのまま進んだらしい。途中、登山者には一人も出会わず、下っても下っても登山道が続くので不安になり、今日の夜は野宿しなければならないかも…と覚悟していたそうで、そんな時に私の姿を見つけてホッとされたようだった。最初に声をかけられた時に、なんとなく普通じゃない緊迫感を感じたのだが、そういう事情だったのだ。でも日が西に傾く頃ならともかく正午頃の話で、焦るにしては、いくらなんでも早すぎると思わないでもなかったが。
 表掛コースを進めば1時間ちょっとで路線バスも通る県道に出られること、出たすぐ上には温泉の「いこいの村栗駒」もあると教えてあげると、心底安堵されたようだった。この赤い池にはそんな思い出もある。

 さて、それはともかく、同様に赤い沢を見かけることもある。これらは水自体が赤褐色に染まっているのではなく、底に堆積している沈殿物で赤く見えるようだ。特に長野県小諸市・浅間山登山道の途中、沢の対岸にはドーム状の2、3の土塊群の頂上から酸化鉄を含む地下水が流れ出して、まわりの青々とした草とともに異様なコントラストを描いていた。



栗駒山・表掛コースにある赤い池。御沢を横断する直前の笹の中にあった。岩手宮城内陸地震の被害が顕著だった地域だけに今もあるかどうか、あったとしてもやはり赤いかどうかは不明だ。



赤い湿原。黒姫山中腹にある古池湿原は、表面が赤褐色を呈している。緑が進むと、湿性植物に覆われて目立たないが、ミズバショウが咲く春に訪れると、ちょっと異様な景観が広がる。写真の時期はミズバショウが終わり、ミツガシワが最盛期を迎える頃だが、場所によってはこのように赤褐色がよくわかる。



栃木県日光市・戦場ヶ原で見かけた赤く染まる水路


 
長野県小諸市・浅間山登山道沿いにある赤い沢(左)。新潟県妙高市と長野県信濃町の境、苗名滝から上流へ向けて遡上すると(発電用保守道がある)、右岸側に高い岩壁から水を落とす無名の滝があって、その景観も美しいのだが、その付近で道に流れ出した地下水が路面を赤く染めていた。ちなみにその保守道は以前は進入できたが、その後「一般通行禁止」になった。現在は不明(右)。



本文でも触れた浅間山登山道沿いで見かけた赤く染まる土塊群。その上部から酸化鉄入り地下水が湧き出しているのだろう。表面に生える芝生のような草は、見る限りほとんど1種類だけのようだが、含酸化鉄水に適応できる草本類が限られるためと思われる。




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