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熊撃退スプレーの処分方法 −

撮影年月日:2012年12月6日

※熊撃退スプレーの処分方法に困っている人は多いと見えて、このページをアップして以降、アクセスが急増しています。この方法を転載して紹介頂くのは一向に構いませんが、この方法を考案したのはあくまで私なので、自分のアイデアみたいに紹介するのはアウトです。紹介する場合は、情報元として本ページのリンクを貼って頂くか、あるいは本サイト名(Nature Log)を記載して下さい。リンクや記載をせずに転載するのはお断りします。

 熊撃退スプレー「カウンターアソールト」は、非常に有効な熊対策用品であるが、保険みたいなもので、実際には一度も使わないまま使用期限を過ぎてしまうことがほとんどだろう。以前、登山用具入れに保管していたカウンターアソールトが、容器の接合部分の劣化によって知らないうちにジワジワと樹脂状の粘液が漏れ出していたことがある。中身も完全に劣化していたので、きつい匂いもなく、漏れていたことさえ気づかなかった。そんなことがあったので、続けて使用期限が切れていた次のスプレーも漏れ出す前に処分することにした。
 輸入販売元アウトバックでは、「必ず火気のない屋外で他に迷惑がかからないように周囲や風向きに注意して、容器を地面に向けスプレーし、全ての圧力が抜けるまでバルブを押し続ける」という処分方法を勧めているが、その方法を試してみたところ、カプサイシン成分が周囲に拡散して匂いがきつく、その方法で最後まで放出するのは相当に厳しそうだった。この方法を実行するには、周囲に民家が建て込んでいる自宅の庭のような場所では到底無理な話で、迷惑がかからい場所を探すことから始めなければならず、手間がかかる。

 そこで、ふと水の中で噴出させればいいのではないかと思いつき、バケツに水を一杯に張り、スプレーを完全に水没させた状態で、噴出口を下に向けてバルプを押してみたところ、成分が水溶性らしく噴霧した瞬間に水の中に溶け込んで、周囲にはわずかなトウガラシ臭しか飛散しない。完全に中身がなくなるまで2〜3分程度の時間を要し、途中一度バケツの水を交換した。ただし、素手だとトウガラシ成分のせいで、あとから皮膚が若干ヒリヒリしてしまうので、使い捨てのビニール手袋かゴム手袋を着用して行った方がよさそうだ。中のガスが完全に抜けたあと、念のため釘と金槌で穴を開けて不燃ゴミとして破棄した。

 ちなみに私が過去に買ったカウンターアソールトの状況は次の通りである。

 ●1995年製造・購入のカウンターアソールト→製造17年後にあたる2012年秋に登山道具入れの中で漏れ出して中が空になっているのを発見。成分は完全劣化して匂いもまったくなかったため気づくのが遅れた(漏れ出ていた樹脂状粘液は、顔を近づけるとわずかな匂いがある程度)。

 ●1999年製造・購入のカウンターアソールト→今回処理したもの。地面に少し噴霧してみたところ、強烈な匂いはまだ健在だった。ただし、製造直後の匂いを知らないので、劣化がどの程度進んでいるのかは不明だ。13年という時間を考えれば、経年劣化によって弱まっている可能性は十分にある。

以下記事NEW
 ●使用期限2007年のカウンターアソールト→期限を13年も過ぎた2020年夏。実家にアナグマが出没して、一日おきくらいに外階段に糞をするので困っていた。そこでこの使用期限切れカウンターアソールトを利用することに。アナグマ撃退に新品を使うのは、あまりにコスパが悪いが、破棄するためのガス抜きも兼ね、しかもどのくらいの刺激臭が残っているのか調べるという意味では悪くないプランだ。しばらくして深夜に物音がしたので外に出てみると、庭にアナグマがいたので(人間に対する警戒度は個体差があるようだ)、2度に渡ってスプレーで撃退(おそらく別個体と思われる)。「ギャー」みたいな悲鳴を上げるわけでもなく、反応は意外と鈍かったが、一度目は無言で逃走。二度目は少し逃げてうずくまり、さらに噴霧して、ようやく逃走した程度。「反応は鈍い」といっても相当な打撃だったはずで、確かに以後ピタリと出没しなくなった。噴霧はアナグマに向けて一瞬だったが、噴霧直後に噴霧エリア内に入ると、「うわ〜。こりゃダメだ」といいたくなるような刺激臭で、すぐに退避した。しかも翌日になっても足がヒリヒリした。ただ、翌朝に噴霧エリアの地面に鼻を近づけて臭いを確認したが、刺激臭はまったく残っていなかった。おそらく噴霧直後はカプサイシン成分がしばらく空気中を漂うが、やがて地面に落ちてしまえば臭いは残らないということなのだろう。おそらくこのカウンターアソールトをクマに使っても、同様に撃退できるのではないかと期待させる刺激臭が健在だったのは間違いない。ただ、上でも書いたように新品との差は不明。
NEWここまで


 以前、ある山で出会った地元の自然環境保全の仕事に携わっている人が、熊撃退スプレーは製造後7〜8年でも使えると仰っていた。私も多少オーバーしても持ち歩いているが、上記の例から15年以上経過すると完全劣化するとも考えられ、効果は徐々に低下していくだろうことを考慮すると、やはり、なるべく早めに買い換えた方がよいかもしれない。


【追記】奈良県のTさんからお寄せ頂いた情報

 カウンターアソールトの主成分「カプサイシン」は脂溶性で水に溶解しないので、バケツの水中に噴射した状態では、水の中に「脂溶性のカプサイシン」が小さな粒子となった水中油滴型のゾルの状態と考えられる。
 またバケツを汚さなくてすむように内側にビニール製ごみ袋を被せておけば、あとの処理が楽になる。カウンターアソールトを水中噴射させて少し時間を置くと、水とゾルの2層に分離すると思われるので、分離したらビニール袋の下に針で穴をあけて、下層の水を排出し、上層のカプサイシンゾルをシュレッダー処理した新聞紙などに吸着させて、そのままゴミとして捨てればよい。この方法は油性塗料スプレーの処分にも応用できる。



 私がカウンターアソールトをこの方法で処分したのは数年前に一度あるだけで、その時の記憶もすでに曖昧だが、一度目の水中噴射のあとに汚れた水を交換する際に見た限りでは、水質は上層も下層も一様だったような気がする。ただカプサイシンが脂溶性であれば、確かに当然、分離するはずなので、水を交換したのが噴射直後だったからかもしれない。
 バケツの汚れに関しては、私が処理した時の印象からすると、多少、汚れたくらいで、成分がベッタリとバケツ内側に付着するようなことはなく、あまり気になるほどではなかった。ただ、最近はカウンターアソールト以外の類似品もあり、商品によって性質が違う可能性があるかもしれない。汚したくないバケツを使う際は、念のためビニール袋を被せておく方が無難なのは間違いないだろう。
 またカプサイシンは唐辛子の主成分でもあり、特にカウンターアソールトは、もともと自然度の高い場所での使用を念頭に開発されているはずなので、そのまま下水に流しても問題ないような気もするが、カプサイシン以外の成分については不明で、より確実・安全な処分をするには、Tさんお勧めの方法の方がいいかもしれない。



水を張ったバケツの中で噴霧させると、みるみるうちに水はトウガラシ色に。写真は一度水を交換したあとなので、それほどでもないが、一度目の水はさらに真っ赤に染まり、表面全体が泡立った状態になった。手に付着すると、わずかに匂いが残る程度ではあるが、トウガラシ臭がしばらくとれなかった。




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