Nature
山岳記
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山で困ったこと4 南アルプス深南部・山犬段

撮影年月日:1998年11月10日

 晴れ渡った秋の1日、南アルプス深南部、蕎麦粒山周辺を一巡したときのことである。蕎麦粒山山頂からは富士山もよく見え、紅葉の山を満喫した。少し離れた林道に降り立ち、林道をトボトボ歩いて、ようやく山犬段駐車場に戻って来たのはもう夕闇が迫るころだった。朝は何台か停まっていた登山者の車は一台もなく、私の車がポツンとあるだけ。服を着替えて帰り支度をするが、ここは山麓から車で1時間もかかる山奥である。ちょっと下れば国道…というわけにはいかない。案の定、車をスタートさせて、しばらく下ったあたりで完全に真っ暗になってしまった。
 山麓とを結ぶ未舗装林道は、石だらけの悪路で、ただでさえ路面状態は読みにくい。来るときも車の腹に石が何度も当たりヒヤヒヤしたのだが、ライトで照らし出される路面はそれにも増してわかりにくい。…と思っていたら、ついに懸念した事態が発生してしまった。下の方から「ガン!」という大きな音が聞こえた直後、ガラガラという異音が!! どうやら運悪く車の駆動装置に当たってしまったようだ。走れなくもないが、ガラガラガラガラと音をたてながら自宅まで帰るわけにも行かないし、そのまま走っていたら故障するかもしれない。ろくな工具もないのに素人が直せるとは思えなかったが、とりあえず見るだけ見てみよう…と夜の林道路肩に車を停めてジャッキアップ。寝転がって懐中電灯で照らしてみると、すぐに原因がわかった。シャフトの軸受けのひとつが斜めに歪んでいたからだ。車に積んであったバールを差し込んで、なんとか元に戻した。
 走ってみるとウソのように異音はしなくなった。やはりガラガラ音の原因は軸受けの歪みだったようだ。再び石が当たらないように祈りながら林道を慎重に下り、ようやく国道との交差点にあるガソリンスタンドの明かりが見えてホッとした。

 このときは自分で対応できる範囲内のことだったから、何とか解決して無事帰途に就いたわけだが、当たりどころが悪ければ、お手上げだったかもしれない。それでも車が動けばまだいい方で、もし深山の夜の林道で動かなくなったらと思うとゾッとする。未舗装林道というのは、そういう意味でリスキーなのだ。わかっていたつもりだが、この一件で強く胆に命じることとなった。

関連情報→本サイト「山岳記 林道1 林道走行のリスク



夕闇が迫る山犬段駐車場。建物は休憩舎。帰る前に撮影したもの


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