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氷河期には北半球全域に分布していた
ミツガシワ

ミツガシワ科
Menyanthes trifoliata
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 ミツガシワは漢字で「三柏」と書き、カシワの葉に似た小葉3枚からなることに由来。ミツガシワ科ミツガシワ属の多年草で、山地の湿地や湿原に生え、時に大きな群生を作ることもある。以前はリンドウ科とされていたが、近年遺伝子レベルの研究が進み、科を分ける見解が出てきたようだ。
 主な分布は北海道や本州中・北部の寒冷地だが、東京都練馬区の三宝寺池や京都市北区の深泥池のように都市部に奇跡的に残っている例もある。また三重、滋賀、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、大分、佐賀の西日本各地にも自生地が点在しているが、すべての府県で絶滅危惧種に指定している。

 ところでミツガシワは、200万年前の氷河期には北半球全域に分布を広げ、日本では鹿児島県あたりにまで広がったとされ、現在の子孫はその後に生き残ったレリック(残存種・遺存植物)なのである。さらに溯れば、3500万〜2500万年前の斬新世の地層からも種子の化石が発見されており、かなり古い植物であることがわかる。なお花は直径1〜1.5センチで、深く5裂し、裂片の内側には縮れた毛が密生している。

 ミツガシワといえば、長野県白馬村の親海湿原(およみしつげん)が有名。当たり年には湿原を白く覆うほどに大群生する。それは見事な景観だ。ほかにも中部地方や東北地方の湿地や湿原でよく見かけ、花が終わったあと3枚葉で覆われた湿地に遭遇することも多い。なお、果実の写真は植物記「いろいろな果実」に掲載してある。



親海湿原を覆うミツガシワの見事な群生。



縮れた毛が特徴のミツガシワの花。島根県飯南町・赤名湿地。




  
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