太い円錐花序が目立つ
コバイケイソウ
ユリ科
Veratrum stamineum
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花には当たり年と外れ年があるが、コバイケイソウほど、それが顕著な花はほかにはないだろう。およそ６～７年に１度当たり年がやってきて、そんな年に出会おうものなら、びっしりと咲くコバイケイソウのお花畑を満喫できるが、それ以外の年には、「あの大群生は夢だったのか」と疑いたくなるほど、パラパラとしか咲いていないこともある。いや、ちょっとでも咲いていればいい方で、年によってはまったく花を見ないことすらある。
花を作るのは相当なエネルギーを必要とするわけで、受粉の機会が最も高くなるように群落の開花ピークを同調させた方がいいに決まっている。だが一体どんな手段でピークを揃えているのだろうか。ひとつの群落内の遺伝子形質は近いはずだから、開花を揃える仕組みがなくても、ピークは自然に一致するようになるのか。それとも何らかの情報共有手段でもあるのだろうか。
ところで2005年はコバイケイソウの当たり年だったようだ。特に北アルプスや中央アルプスはすごかったらしい。カヤノ平で立ち話をしたライブラリー専門のカメラマンの人がそう言っていたので、時間があれば足をのばそうかと思っていたのだが、結局スケジュールを空けられなかった。私は2004年に千畳敷を訪れたが、ピークの前年だったにもかかわらず、まずまずの開花だった。もし開花が放物曲線のようにピークを迎えるのなら、今年もそこそこの群生は楽しめるかもしれない。でも来年、2007年は期待薄だな。
北海道と本州中部地方以北の山地帯～高山帯に分布するユリ科シュロソウ属の多年草。日本固有種で有毒植物。漢字では「小梅蕙草」。花が梅に、葉が蕙蘭に似るバイケイソウよりも小さいことから。一般に名前を正確に覚えられていない、かわいそうな花は数々あって、例えばニッコウキスゲはニッコーキスゲと書かれていることも多いが、このコバイケイソウもそのひとつで、なぜかは知らないが、途中の「イ」をひとつ抜かし、しかも「・」の部分で区切って「コバ・イケ・ソウ」と呼ぶ人も意外に多い。
昨年だったか。コバイケイソウの写真を撮影していたら年配の夫婦の登山者に花の名前を聞かれた。私「コバイケイソウです」。おばさん「あぁ、コバイケソウね」。私「いえ違います。コバイケイソウです」。おばさん「コバイケソウ？」。私「いえ、コバイケイソウです」。おばさん「？」。結局、「バイ・ケイ・ソウというなかまの植物があって、それよりも小さいのでコ・バイ・ケイ・ソウと名付けられたんです」と説明して、ようやく理解してもらえた。あーやれやれ。
ちなみに葉の裏面脈状に突起状の毛があるものを品種・ウラゲコバイケイ（f.lasiophyllum）と呼ぶ。ほかに低地に適応した変種にミカワバイケイソウ（var.micranthum）がある。
関連情報→本サイト植物記「バイケイソウ」
中央アルプス・千畳敷に群生するコバイケイソウ。
コバイケイソウの花期草姿。北海道雨竜町・雨竜沼湿原。
若芽。この段階ではバイケイソウとの区別は困難（左）。蕾はまるでトウモロコシのよう。以上２点、長野県・志賀高原（中）。果実は蒴果で、ひとつひとつは先が尖った紡錘形。北アルプス・種池（右）
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