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雪国に春を告げる白い清楚な花
ミズバショウ

サトイモ科
Lysichiton
 camtschatcense
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 ミズバショウは雪国に春を告げる身近な花。北海道および東北〜中部地方の日本海側に分布するが、かつて分布の西限は岐阜県高鷲村の蛭ヶ野高原とされていた。ところが、その後、西限は少しずつ更新され、現在では30年ほど前に発見された兵庫県大屋町の自生地が西限とされている。この自生地では地下の花粉分析から11000年前から生えていたことが判明している。

 ところで白い部分は花の下から出た特殊な葉にあたり「仏炎苞」と呼ぶ。この葉は当然光合成ができないので、花を保護する役目があるともいわれている。本当の花は中心に立つ棒状の部分(このような花の集まりを肉穂花序という)で、よく観察するとびっしりと小さなマス目があり、それぞれに黄色い点々があることがわかる。実はこの六角形状のひとマス目がひとつの花にあたり、全体では三百個以上の花が集まってできている。点々に見えたものは雄しべや雌しべなのだ。花にはハエなどの昆虫がやってくるが、ミズバショウの花は蜜を出さず、しかも花粉の採取も観察されていないため、彼らが何を目的に訪れているのか謎だという。虫媒花ではなく風媒花ではないかという説もあるそうだが、まだわかっていないらしい。雪国ではごく身近な野草なのに花粉の媒介者すら実はわかっていないのだ。

 花が終わると次第に葉はのびて、夏には長さ1m前後にまで達する。この葉が芭蕉の葉に似て、水湿地に生えることから「水芭蕉」の名前がある。初夏〜初秋には果穂が熟してパラパラと種子を落とす。ミズバショウは有毒植物だが、クマなどが果穂を食料にすることもあるようだ。こうして毎年繰り返し花をつけ、中には40年もの寿命を保つ株もあるという。
 なお北米大陸には、日本でアメリカミズバショウと呼んでいるなかまが分布している。仏炎苞が黄色いのが特徴だ。

関連情報→本サイト植物記「双苞ミズバショウ



春の陽光に照らされて輝くミズバショウ。長野県飯綱町・むれ水芭蕉苑。



ミズバショウの群生。長野県飯綱町・むれ水芭蕉苑



ミズバショウの肉穂花序。小さなマス目ひとつひとつが、ひとつの花にあたる(左)。花のあとは果実が実る。写真は若い果穂(中)。葉にはこの写真のように斑が入るものもある(右)



夏のミズバショウは、葉が大きくなり、花の時期の面影はまったくない。乗鞍高原にて(左)。アメリカミズバショウ。栃木県・日光植物園にて(右)。


  
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