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日本では北海道と尾瀬に分布する
ナガバノモウセンゴケ
モウセンゴケ科
Drosera anglica
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 モウセンゴケ科モウセンゴケ属の多年草で食虫植物。高層湿原に生え、日本では北海道と尾瀬のみに分布し、尾瀬の上田代には見事な群生地もある。世界的には南ヨーロッパからユーラシア大陸や北アメリカ北部、さらにはハワイ諸島のカウアイ島にまで広く分布する。そのため記載されたのも約250年前の1778年と、かなり古い。尾瀬が世界の南限とされた時期もあるが、カウアイ島の高所にある湿地で見つかったことで、南限ではなくなった。

 葉は長さ5~10センチの柄があり、長さ3~4センチの線状倒披針形の葉には、表面に紅紫色の腺毛が多数生え、先端から粘液を出して飛び回る昆虫を付着させる。昆虫を捕らえると、腺毛が時間をかけて湾曲し虫を抑え込む。タンパク質分解酵素の分泌により、虫を消化して栄養を吸収する。

 7~8月に高さ10~20センチの花茎の先に直径1~1.5センチほどの5弁花を数個つける。モウセンゴケ(D. rotundifolia )の葯は白いが、本種の葯は黄色い。

 本種の起源は、モウセンゴケと北アメリカに分布するD. linearis それぞれのゲノムを2個ずつ保有する異質二倍体が生じ、元々は不稔だったが、やがて偶然にも稔性を得て本種に至ったと考えられているようだ。

 また本種とモウセンゴケとの間で雑種を作り、葉の形態が両種の中間であることから、これをサジバモウセンゴケ(Drosera × obovata )と呼び、尾瀬では本種と並んで生えていることもある。

 なお近年、サジバモウセンゴケに似た帰化植物のナガエモウセンゴケ(D. intermedia )が国内に侵入し問題になっている。北アメリカやヨーロッパを原産とする種類だが、岡山県や千葉県で確認され、岡山県自然保護センターの文献(※)に目を通すと、それどころではなく外来のモウセンゴケ科7種、タヌキモ科3種、サラセニア科3種が2002~2005年に県南部の湿地で見つかっているそうだ。どうも愛好家による植栽のようで、これもまた大いに困ったことである。

※片山博行、西本孝:岡山県における外来食虫植物の侵入状況-その2,岡山県自然保護センター研究報告13巻、21-28(2005)

関連情報→本サイト植物記「食虫植物




名前の通り、モウセンゴケよりも長い葉を持つナガバノモウセンゴケ。腺毛の先で玉のように光る粘液に注目。尾瀬ヶ原で。



尾瀬ヶ原・上田代で見られる本種の見事な群生。



花を付けた本種。尾瀬沼近くの大清水平で撮影。


サジバモウセンゴケ。同じく大清水平で、本種の隣に並んで生えていた(左)。サジバモウセンゴケの花。葯は白いようだ(右)。


  
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