<<前のページ | 次のページ>>
現代に現れた数千年~数万年前の木
埋もれ木

…………………………………………………………………………………………………

 埋もれ木とは、数千年から数万年前の樹木が、火山活動や土砂の堆積などによって地中に埋もれたまま現代に至るまで腐らずに残ったもので、森林の場合は埋没林と呼ぶ。日本では青森県の猿ヶ森ヒバ埋没林や出来島最終氷期埋没林、富山県の魚津埋没林、島根県の三瓶小豆原埋没林などがよく知られている。

 このうち出来島最終氷期埋没林では、約28000年前にエゾマツやアカエゾマツの針葉樹林が、洪水などによって水没したが、泥炭層という弱酸性の特殊な環境下で根が腐らずに残り、その一部が断崖から顔を出している。見つかったのは意外と新しくて1994年9月だったという。私は2001年に訪問して、以下の写真を撮影できたが、地元行政によると、近年は土砂崩れや浸食等により埋没林を見ることができない状態とのことである。

 なおトップ写真は、新潟県糸魚川市の頚城山塊・焼山山麓に立つ約3000年前のブナの立ち木(位置リンク)。約3000年前の噴火で焼山が誕生した際に火山灰や土砂で山麓に広がっていたブナ林が埋もれたが、その後、早川の浸食によって再び地表に現れた株のひとつ。同様の立ち木は周辺にまだ多くが埋まっていると考えられるので、今後、新たに地上に現れる可能性はある。

 ちなみに屋久島にも「土埋木(どまいぼく)」という木がある。ただ、こちらは江戸時代や高度経済成長期に伐採されて残された屋久杉の切株や倒木のことを指し、埋もれ木と同じように思えるが、土の中に埋まっているわけではない。



タダの枯れ木と思ったら大間違い。焼山山麓に立つ、この木はなんと約3000年前のブナ。幹の上部から出ている葉や枝は着生した別の木のもの。



その入口に立つ解説板。糸魚川世界ジオパークの認定に伴って設置された。



青森県つがる市。出来島最終氷期埋没林の泥炭層断崖には約28000年前のエゾマツやアカエゾマツの根が点々と露出していた(赤矢印)。



崩れ落ちた泥炭塊。乾燥してひび割れしていたが、そこにも埋没林の根が見られた。



出来島最終氷期埋没林の全景。約1キロに渡って続く。



神奈川県箱根町・箱根湿生花園に屋外展示されている神代杉。湿生花園がある仙石原一帯には、昔から大きな木が埋まっていることが知られ、これを神代杉と呼んで、箱根細工などに利用していた。湿生花園でも5株が出土したため、850年前の株はこうして水中で保管してあるが、2900年前の株は展示室に置かれている。



神代杉の解説板。神代杉はいずれも地下1~2メートルから発見されることから、生えていた木がそのまま埋没したわけではなくて、巨大地震で山から滑り落ちてきて埋まった木の方が多いのではないかと考えられているという。



  
 CONTENTS 
 
   
 

Nature
植物記