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葉緑素を持たない森の幽霊?
ギンリョウソウ

ギンリョウソウ科
Monotropastrum humile
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 北は北海道から、南は南西諸島にまで分布するギンリョウソウ科の腐生植物。以前はイチヤクソウ科とされていたが、近年ではギンリョウソウ科として独立させる考え方が多くなっているようだ。その姿は、蝋細工のようで何とも不思議。漢字で書くと「銀竜草」。竜を「リョウ」と読ませる理由は知らない。別名「ユウレイタケ」というのはなるほど頷ける。
 山ではよく見かけ、特にブナ林の林床には多い。下向きに咲かせる花の中を覗くと、縁が紫色をした柱頭と10個の雄しべが見える。また茎には多数の鱗片葉がつくので、確かに竜の鱗のようにも見える。傷むと花や鱗片葉の縁が黒くなるので、早い時期の方がきれい。果実は球形の液果だが、同じ科のシャクジョウソウやギンリョウソウモドキは、容姿は似ているのに果実は刮ハ。ただギンリョウソウモドキはシャクジョウソウと属を分ける考え方もある。

 ところで今年、日本植物分類学会誌の表紙に、鮮やかな藍色をしたギンリョウソウの写真が掲載されていた。どこか外国にこのようなギンリョウソウのなかまがあるのか、と中を読んでみて絶句した。なんとその藍色のギンリョウソウは、2003年に日本国内で発見されたものだったのだ。発見者はルリイロギンリョウソウと名付けているが詳細な調査もまだのようで、学名もMonotropastrum sp.?とされているだけ。色だけでなく形態にも違いがあるようだ。日本の植物相も奥が深い。植物のことでびっくりしたのは久々だ。


長野県カヤノ平高原のブナ林で顔を出したギンリョウソウ(左)。芽生え。群馬県・至仏山にて(中)。果実。山梨県・三ツ峠山(右)。



花は下向きに咲くので、中を覗き込むように撮影するのはなかなか厳しいのだが、たまたま斜面の谷側に向かって咲く花があったので、それが可能となった。柱頭の縁は紫色が多いように思うが、この個体は藍色だった。長野県飯山市・関田山脈


  
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植物記