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トリカブトの中では世界最強毒とも…
エゾトリカブト

キンポウゲ科
Aconitum yezoense
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 キンポウゲ科トリカブト属の多年草。北海道中部の低地に多い北方系トリカブトの代表種。北海道の低地では、本種のほかにカラフトブシやシコタントリカブト、ヒダカトリカブト、オクトリカブトなどが見られるが、本種の茎葉は3全裂し、裂片が浅く欠刻状に分裂する点が異なる。

 一説には、本種の毒性はトリカブトの中では世界最強で、2番目はオクトリカブトといわれる。どちらにしても昔はアイヌもトリカブトの根を「スルク」と呼んで矢毒とし、主に利用されたのは本種だったらしい。その製法は秘伝中の秘伝とされ、アイヌは、これを用いてヒグマやエゾシカなどを捕獲していた。つまり大型哺乳動物をも倒す強毒性のトリカブトというのは間違いない。
 ただ、トリカブトの毒性は産地によっても変わるとされ、日本には無毒のトリカブトも存在する一方で、例えば、毒性の弱い種類を自生地以外の他所へ移植すると、毒性が増すことがあるそうだ。このことは、有毒成分を作り出す機構に植物体以外の、土中に含まれる特定要素(元素?)が深く関わっている可能性を示唆しているといえそうだ。

 ところで掲載した写真は、2013年8月に北海道南部の黒松内町の国道わきで見かけたトリカブトである。実は同定にかなり迷った個体で、とりあえず今回、エゾトリカブトとしてみたが、まだ少し迷っているのが実情。というのもエゾトリカブトは北海道の中央部に多く、道南地方はオクトリカブトの分布域。しかし、写真個体の葉は3全裂しており、中裂しかしないオクトリカブトとは思えない。下部の葉は、細かく裂けてちょっとカラフトブシのようにも見えるが、エゾトリカブトの形態に合致する株が隣接して生えていて、余計に迷った。従って、ひょっとすると同定違いという可能性もあるという前提で見て頂ければと思う。いずれ、確証が得られるエゾトリカブトを撮影できたら追加したい。

【追記】
2017年9月にエゾトリカブトと同定できる株の写真を撮影できたので追加する。


関連情報→本サイト植物記「トリカブトのなかま



同定に迷った黒松内町のトリカブト。花の形態もエゾトリカブトと比較して違和感はないが…。



細かく裂ける下部の葉。ここまで細かく裂片が切れ込むと、カラフトブシのようにも見えるが、カラフトブシの分布は北海道の北部と東部。しかも隣接する株では、ここまで細かく切れ込んでいなかった。う〜ん。わからない!!



見事に花を付けたエゾトリカブト。北海道えりも町(以下4点同じ)。






葉の裂片は3全裂し、裂片の基部はまるで葉柄のように細くなる。



白花もあったが、萼片内で透けて見える本来の花弁は紫色しているらしいことがわかる。



林道沿いに群生するエゾトリカブト。



  
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