Nature
  
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一種一種、植物を取り上げて、その植物にまつわる話題を写真とともに紹介します。

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植物記
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都内の公園で細々と自生する
ムサシノキスゲ

ユリ科
Hemerocallis middendorfii 
var. esculenta f. musashiensis
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 ニッコウキスゲといえば、霧ヶ峰や尾瀬などの群生地を出すまでもなく、その名前を知らない人はいまい。ところが、このニッコウキスゲの近いなかまが、都内にも自生している。それは東京都府中市にある都立浅間山公園だけに生えるムサシノキスゲである。
 ムサシノキスゲは低地に適応したなかまで、昭和23年に発見命名されたが、近年ようやく学名がついたばかりの品種である。7月に咲くニッコウキスゲに対して、2ケ月ほど早い5月上旬から咲き始める。公園に咲くと聞けば植えたものと思うかもしれないが、正真正銘の自生だ。
 浅間山公園の自生地は武蔵野一帯が雑木林に覆われていたはるか以前から脈々と受け継がれてきたものだろうが、今や完全に都市化した周りの環境を見るにつけ、よくぞ残ったと思わずにいられない。十数年前には一時花がまったく咲かなくなった時期もあったそうだが、その後、地元の保護活動などにより、見事な群生美を楽しめるまでに回復した。
 多くの人は高原に咲くニッコウキスゲ群生ばかりに注目し、ムサシノキスゲのことを知る人はごく少ない。しかし、実は東京の身近な公園にもそのなかまが逞しく生きているのだ。山の花もよいが、たまには都市の中でひっそりと生き続ける花と出会うのも悪くない。お近くの方は、そんなムサシノキスゲを見に足を運ばれてみてはいかがだろうか。

*上記学名は「東京都の保護上重要な野生生物種1998年版」に準拠。



浅間山公園に群生するムサシノキスゲ。今や花期には見応えのある群落にまで回復した(上・下とも)。