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根室地方の海岸に生える
ネムロシオガマ
ゴマノハグサ科
Pedicularis schistostegia
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  北海道の根室地方と礼文島に分布するゴマノハグサ科シオガマギク属の多年草。海辺やその周辺の草地に生え、高さ15〜30センチ。茎や葉柄には柔らかい毛が密生する。葉は羽状に全裂し、茎頂に長さ2センチの淡黄色〜白色の花冠を多数つける。

 本種は、北海道に行かなければ出会えず、なかなかその機会はなかったが、2013年の北海道取材で2度遭遇を果たす。探そうとしたわけではなく、2度とも偶然だった。
 ほかのシオガマギクのなかまは、ある程度、自生地が特定できる。○○山に生えることがわかっていれば、開花時期に合わせて登れば遭遇する可能性はある。しかし本種の場合は「根室地方の海岸」という大雑把な情報しかない。これではどこへ行けばいいのか、まるでわからない。そんな風にずっと思っていたのだが、たまたま訪問して散策してみた霧多布岬の遊歩道沿いで、ほかの草に隠れるように1株だけ咲いていた本種を偶然発見。思わず「おーっ! ネムロシオガマだっ」とひとり喜びの声を上げてしまった。その後、根室市の某湿原でも偶然出会いを果たす。

 これによって主な日本産シオガマギク属のなかまは、ほとんど実見できたことになる。残りの未見種は、本種の赤花品種で礼文島のみに産するカフカシオガマ( f. rubriflora)と、隣の利尻島・利尻山に稀産するベニシオガマ( P. koidzumiana )だけである。しかし、両種とも出会うのは相当に難しそうだ。カフカシオガマは、礼文島の花ガイドブックの定番ともいえる『礼文 花の島花の道』(北海道新聞社)の、手元にある旧版(1995年)と新版(2001年)のどちらにも種名も写真も掲載されておらず、ネット検索しても、写真が掲載されたサイトは、たった1件しかヒットしない。

 さらにベニシオガマに至っては、利尻山の険しい斜面に稀産し、以前、植物写真家の木原浩氏が、苦労の末、山頂付近の急崖でようやく見つけ、助手にザイルで確保してもらって命がけで撮影した…ということを雑誌に書かれているのを読んだことがあるほどの超稀産種なのだ。ネット上でも種名のみか、あるいは同定ミスなどでヒットするくらいで、唯一写真を載せているのは、その木原氏のオフィシャルサイトのみである。開花時期に利尻山に登らなければならないことに加えて、発見できる可能性は低く、さらに撮影するとなると相当にハードルが高そうだ。たぶん見ることさえ難しいだろう。

関連情報→本サイト植物記「シオガマギクのなかま
※このページには私が実見した全種類は掲載してありません。



紅色が多いシオガマギク属の中にあって、クリーム色の花冠は新鮮に映る(同系色の花としては、ほかにもエゾシオガマとかセリバシオガマとかもあるが)。霧多布岬で見つけたのは単なる偶然。探せばまだあったかもしれないが、私が見たのはこの写真の株のみ。



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