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東海地方では普通に見られる
スズカアザミ
キク科
Cirsium suzukaense
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  スズカアザミ(鈴鹿薊)という名前を聞くと、鈴鹿地方固有の希少種のような印象を受けるかもしれないが、アザミ類はノアザミやキセルアザミ(マアザミ)など一部の広範囲に分布する種類を除けば、あとのほとんどは地域ごとに分布が限られる種類だ。本種もそのひとつで、静岡、愛知、三重、滋賀の各県に分布し、実は東海地方では普通に見られるアザミである。名前は、基準産地の鈴鹿山脈・鈴鹿峠に由来する。

 茎葉は長さ30センチほどあり、羽状に中裂〜深裂し、先は尾状にとがる。頭花は上向きか、やや斜めにつき、総苞は筒状。葉の両面は毛があるものと無毛のものがあったり、葉の基部は茎を抱くものと抱かないものがあったり、さらには総苞片も圧着するものや開出するもの、あるいはやや反り返るものなど、変異に幅があるようだ。花期は9〜11月。

 写真は2000年9月下旬に愛知県作手村(現在は新城市)の中河内ユルメキ湿地で撮影したスズカアザミ。旧・作手村一帯には湿原や湿地が点在し、この時もそんな湿原探訪が目的だった。中河内ユルメキ湿地はある程度場所がわかっていたので比較的簡単に見つかったのだが、見つからない湿地もあった。そこで作手村教育委員会に電話すると、担当者の方が「詳しく教えてあげるからこちらにいらっしゃいませんか」と親切に言って下さり、お言葉に甘えてお邪魔したことがある。加えてたまたま教育委員会に来ておられた植物の先生も紹介して頂き、先生からも愛知県内の湿原や湿地情報をかなり詳しく教えて頂いた。先生は温厚な紳士で、1時間近くも私の質問に付き合って下さった。とても有意義な時間で、先生にも教育委員会にも感謝申し上げたい。作手村にはそんな思い出もある。




旧・作手村の中河内ユルメキ湿地に咲くスズカアザミ。湿地を好むというわけではなく、その周辺にたまたま生えていたものと思われる。細い葉が印象的なアザミだ。



  
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植物記