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秋田県の小阿仁川に由来する希少ラン
コアニチドリ

ラン科
Amitostigma kinoshitae

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 中部地方以北の本州と北海道に分布するラン科ヒナラン属の多年草。亜高山帯の湿原や湿った岩場に生え、高さ10〜20センチ。6〜8月に茎頂に淡紅紫色の小さな花を咲かせる。唇弁は3裂し、後には短い距がある。その姿は、まるでスカートを履き頭巾を被った少女のようにも見えるので余計に愛らしい。
 大正8年、最初に発見された秋田県上小阿仁村の小阿仁川に由来し、上小阿仁村の「村の花」に選定されている。種小名は発見者の木下友三郎を記念したものである。

 もう随分前のことだが、ある人から本種の自生地情報を教えてもらった。いつか訪ねてみたいと思いつつもなかなか実現せず、ほとんど忘れかけていた。ところが6年前にある大手出版社が出した一般向け植物図鑑に本種が掲載されているのを見て、「そういえば…」と記憶が蘇った。撮影地はまさに教えてもらった場所。もちろんピンポイントでわかる地名は伏せられていたが、その後、そこで撮影したと思われる本種の写真を掲載しているサイトを偶然発見して確度が高いと判断。先月(2012年7月)ちょっと訪ねてきた。
 自生地には少し離れた2ヶ所に計約10株があり、撮影していると、本種の撮影が目当てと思われる男性登山者があとからやってきたほか、女性登山者から「何という花ですか」などと質問されて、ちょっと困った。なぜならあまり知られたくないからだ。想像以上に小さな花なので、私が撮影していた30分くらいの間にそれ以外の登山者から興味を持たれることはなかったが、念のためほかの草を前に出して、見えにくくして現場を離れた。

関連情報→本サイト植物記「ヒナラン


花茎を立ち上げて、愛らしい花を咲かせたコアニチドリ(左)。唇弁の中裂片をスカート、側裂片を腕、側花弁を頭巾に見立てれば、まさに「白ずきんちゃん」である。唇弁に入る紅色の斑紋は頭巾のヒモとか首飾りのようにも見える(右)。



  
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