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パラボラアンテナのような花
フクジュソウ

キンポウゲ科
Adonis ramosa

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 山地の明るい落葉樹林内などに生えるキンポウゲ科フクジュソウ属の多年草。3〜4月、直径3〜4センチの黄色い光沢のある花を咲かせる。花弁、雄しべ、雌しべは多数。花弁の外側に紫緑色を帯びた萼片がつく。葉には長い柄があり、羽状に細裂する。高さ10センチほどになると最初の花が咲き始めるが、花のあと茎葉は長くのび、茎は高さ30センチほどになって果実をつける。果実は、鈎状の突起があるそう果が丸く集まる。

 フクジュソウは新年を祝う花として昔から栽培されてきた。春の到来を喜ぶかのように陽光を受けて黄金色の花をいっぱいに開く姿は、確かに新年を迎える花としてふさわしい。だが、正月前後に園芸店の店頭に並んでいるものは温室栽培によって開花をコントロールしたもので、自然の中で正月に咲くことはない。正月の花と呼ばれるのは、旧暦の正月に咲くことによる。花の少ない時期ということもあって、めでたい花として江戸時代から栽培され、さまざな園芸品種が作り出された。一方で有毒植物としても知られ、全草にシマリン、アドニトキシンなどを含み、漢方薬として利用されることもある。

 フクジュソウの開花は、温度に左右される。早朝や雨の日は花を閉じ、太陽が顔を出して暖かくなると一斉に花を開く。しかもそのパラボラアンテナのような花は、太陽の動きに合わせてその向きを変える。その理由は、太陽の光を効率よく集めて花の表面を暖めれば、それに合わせて訪花昆虫の動きも活発になり、受粉の機会が増えるからである。花がパラボラアンテナのような形になっている理由もこの辺にありそうだ。確かに花の表面はまわりの気温よりもおよそ10度も高いという。

 福島県南会津地方にも自生地が多く、所々に群生地もある。以前、車で南会津を走っていたところ、山裾に面した農家の裏庭にフクジュソウが咲いているのに気がついた。家の方にお願いして見せてもらったが、そこは足の踏み場もないほどに黄金色の花で埋め尽くされていた。聞くと自然のものだという。ここの裏庭が光り輝くのは1年のうちわずかな期間だけ。しかし私には、贅を尽くした庭園よりもよほどうらやましく思えたものである。

 ところで、ほかにミチノクフクジュソウ、キタミフクジュソウ、シコクフクジュソウというなかまもある。ミチノク〜は本州の北部〜中部と九州に分布し、@ひとつの茎により多くの花をつける、A萼片は花弁の半分以下と短い、B花弁裏の先端が赤茶色を帯びるなどの特徴がある。キタミ〜は北海道の中部〜東部に分布し、フクジュソウに比べて若い葉や花茎に毛が多い。またシコク〜は、四国と九州に分布し、萼は花弁と同じか、やや短く、葉の両面が無毛という点で区別できる。これらはフクジュソウの変種や品種ではなく、れっきとした独立種(同一種とする見解もある)である。

関連情報→本サイト植物記「ミチノクフクジュソウ



雪が融けて、春を待ちわびたように咲きそろうフクジュソウ群生地/長野県白馬村・姫川源流にて




鈴鹿山脈・藤原岳に咲くフクジュソウ

 
光沢がある花弁は10〜20個/長野県白馬村・姫川源流(左)。花弁が赤くなる品種・秩父紅(植栽)。このような園芸品種も多い(右)。

 
太陽が顔を出す前、気温が低いとこのように花は閉じている/長野県松本市・赤怒田(左)。丸く集まったそう果/長野県白馬村・姫川源流(右)。

  
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