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服にひっつく実は子供にも人気
オナモミのなかま

キク科
Xanthium strumarium
(オナモミの学名)
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 子供の頃、鉤刺で覆われた果実を投げあって服に付けて遊んだ人も多いのではないだろうか。私の地元では、「ひっつきもっつき」と呼んでいたが、それぞれ地方名があることだろう。おもしろい実を付ける植物として子供には人気があるが、3種類のうち2種は確実に帰化植物、残る1種も帰化植物の可能性が高いと考えられている。

 オナモミは、古い文献にも「奈毛美」と記述があり、中には「日本在来種」とする植物図鑑も見受けられるが、ユーラシア大陸原産で古い時代に渡来したとする説が有力である。ただ、近年オナモミは少なくなっており、以下の写真も東京都薬用植物園の栽培品を撮影したものである。
 現在最も幅をきかせているのが、メキシコ原産のオオオナモミ( X. occidentale )である。オオオナモミは、80年前に岡山県で初めて帰化が確認されて以来、勢力を拡大しており、農業関係者には迷惑がられることも多いようだ。
 最後に帰化したのが、1958年に東京で見つかったイガオナモミ( X. italicum )で、原産地は不明とされるが、熱帯アメリカではないかともいわれ、日本だけでなくアメリカやアジア、オーストラリアなどにも広がっているという。

 オナモミのなかまは、キク科オナモミ属の一年草だが、虫媒花が多いキク科にあって、珍しく風媒花で、花のつくりもキク科とは思えない。果苞の大きさと鉤刺の数は、オナモミ<オオオナモミ<イガオナモミの順になる。



オナモミ/東京都小平市・東京都薬用植物園(上・下)







増えているオオオナモミ/神奈川県横須賀市



新潟市西蒲区・弥彦山スカイライン沿いに群生していたオオオナモミ。



オオオナモミの果苞。刺はまっすぐの針状ではなく、先端が曲がった鉤状になっているところがミソ。面ファスナー(マジックテープ・ベルクロ)と同じしくみで、衣服に付着する。オナモミの実にヒントを得て、面ファスナーを発明したのではないかと想像したくなるが、Wikipediaによると野生ゴボウの実だそうだ。



オオオナモミの花。丸い部分が雌頭花、ブラシ状の部分が雄頭花/神奈川県藤沢市



  
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