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植物の不思議な一面を感じさせる
植物雑話1
130年ぶりに再発見された植物


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 植物には、本項トップで取り上げたアキノクサタチバナのように発見されたもののその後一度も見つかっていないものや再発見されるまで数十年以上間があくものもある。つい最近も三宅島でユノミネシダと呼ばれるシダのなかまが70年ぶり(三宅島において)に再発見されているが、もっとすごい話もある。シーボルトがその著書「フローラ・ヤポニカ」(日本植物誌)で紹介したガクアジサイの一品種・シチダンカは、昭和34年に神戸市の六甲山で再発見されるまで何と130年もの間、誰も見た人はいなかった。今やシチダンカは、園芸用に栽培されることも多く、珍しくはないが、この花にはそんな逸話あるのだ。

 またこんな話もある。明治35年に日光の太郎山で神山虎吉によって発見されたトラキチランは、その約50年後の昭和29年まで再発見されなかった。ほぼ連続して昭和32年にも別の場所でも見つかっていることから、ある植物学者は菌根の発育と開花に50年の周期があるのではないかという仮説を立てた。しかし、その後は各地で見つかっており、再発見に時間がかかったのは単に稀なだけであったようだ。確かに環境省レッドデータブックによると、全国の推定個体数は約100株しかないという極めて稀な植物である。

 植物には、そんな不思議な一面もある。絶滅危惧種の新たな自生地が発見されたり、あるいは各都道府県で自生の記録のない種類が新たに確認されることも珍しくはない。しかしだからといって、見かけなくなっても必ずやどこかで復活するとは限らず、絶滅危惧種を守る努力を続けることが非常に重要なことに違いはない。


  
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植物記