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輪生する葉が層をなす
クガイソウ

ゴマノハグサ科
Veronicastrum
 sibiricum 
subsp. japonicam
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 クガイソウは輪生する4〜8個の葉が層のようになることから「九蓋草」と命名されたゴマノハグサ科クガイソウ属の多年草。7〜8月、茎の先に穂状の総状花序を出し、下から上に順に開花していく。目立つのは花冠よりも倍くらいの長さがある雄しべと雌しべ。花冠から突き出し、まるでブラシのようだ。夏の山地草原などで、紫色の花穂をひょろりとのばしている姿をよく見かけるが、花序が細いので1本だけだと絵になりにくい植物だ。

 本種のなかまとしては、紀伊半島・本州近畿以西・四国・九州に分布し、花軸に毛がなく、葉がクガイソウよりも幅広いナンゴククガイソウ(V. sibiricum var. australe)があるほか、北海道には花序や花冠がクガイソウよりも大きく、花軸に短い軟毛が密に生えるエゾクガイソウ(V. sachalinense)がある。

 一方、クワガタソウ属には一見するとクガイソウとよく似ている種類がいくつかある。例えば本州の日本海側の山地に生えるヤマルリトラノオ(Veronica kiusiana var. japonica)、滋賀県の伊吹山のみに生えるルリトラノオ(V. subsessilis)、関東地方〜九州北部の山地に生えるヒメトラノオ(V. rotunda var. petiolata)、京都、兵庫、鳥取、島根各府県の海岸に生えるトウテイラン(V. ornata)などだ。クガイソウ属とクワガタソウ属の違いのひとつは、花冠の裂け方にある。クガイソウ属の花冠は筒状で先は浅く4裂する程度だが、クワガタソウ属のそれは深く4裂し、花冠は短い。ヤマルリトラノオの花序を見るとクガイソウと似ているが、花冠を比べるとまったく違う。よく見ると確かに同属のクワガタソウやヤマクワガタのそれと似ていることがわかる。

関連情報→本サイト植物記「ナンゴククガイソウ



山梨県・櫛形山のアヤメ平に咲くクガイソウ。アヤメで有名な山だが、クガイソウの数も多い。


クガイソウの花。花冠は筒状で、雄しべと雌しべが突き出しているのがわかる。長野県・八子ヶ峰(左)。クガイソウの果実(右)。


北海道に分布するエゾクガイソウ。左は雨竜沼湿原、右は幌延町付近の国道沿いで見かけたもの。左に比べて右のものは豪壮でひとつの茎から複数の花序を出していた。エゾクガイソウの高さは1.5〜2メートル、花序の長さは20〜40センチもある。


一見するとクガイソウによく似ているクワガタソウ属の一例。ルリトラノオ。滋賀県伊吹山にて(左)。同じくクワガタソウ属のトウテイラン。島根県・隠岐(中)。ルリトラノオやトウテイランと同じくクワガタソウ属に属するクワガタソウ。見た目には同属には見えないが、花冠が深く4裂する点では一致している。栃木県・庚申山(右)。



  
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