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木自身がキズを修復したあと
木のコブ

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 コブのできた木を見かけることがあるが、これは何らかのキズができた部分を木自身が修復した跡なのだそうだ。一度、こうしたコブができるとそのまま生長し、コブが縮小するようなことはないらしい。そういえば虫えいも、昆虫や線虫の寄生がきっかけとなって植物組織が異常発育したものだが、コブも似たような反応なのかもしれない。

 ところで長い年月を生き抜いてきた巨樹では幹に大小のコブをまとうこともあるが、中でも最も顕著なコブをもつのが秋田県上小阿仁村・上大内沢自然観察教育林内にある「コブ杉」。推定樹齢約230年のスギで、高さ2メートルほどの位置に拳骨状に大きく隆起したコブがある。まわりの普通のスギと比べると実に異様に見えるが、裏側にまわってみると幹はコブに覆われてはおらず、とってつけたかのよう。これだけのコブを作るには相当なエネルギーが必要なはずで、いったい、どんなキズを負ったのか。それともウィルス感染のような何らかの病気が原因でもコブができるのだろうか。

 また群馬県沼田市・玉原高原にある「ブナ地蔵」は、コブのように見えるブナの一部をお地蔵さんに見立てて名付けられたものだが、もともと普通の状態だった根がコブ状に隆起したわけではなく、以前立っていたブナの大木が倒れ、根元の部分だけこのように残ったものだという。ただ倒れたあとに多少はコブ状に隆起してこうなったのか、それともまったく隆起生長はしていないのか詳細は不明だ。裏側を見るとコブが隆起してできたかのような部分もあるが、実際どうなのだろう。


玉原高原・鹿俣山の登山道途中、ブナ平の名所になっているブナ地蔵(左)。一見すると側に立つブナの根元がコブ状に隆起したように見えるが、裏にまわると別のブナ大木の一部だったことを伺わせる(右)。


山形県で見かけたブナにできたコブ。これくらいのコブなら、たまに見かける(左)。ひとかかえもある大きなコブができたブナも見つけた。青森県・白神山地にて(中)。袋をぶらさげているようなコブができたスギ。愛知県設楽町にて(右)。



特異な容姿に目が釘付けになるコブ杉。林野庁「森の巨人たち100選」にも選定された巨樹だ。


コブ杉の裏側。表側から見るとコブは全体を取り巻いているように感じるが、実はそうではない(左)。あちこちにコブができたアカマツ。広島県北広島町(右)。



  
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植物記