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山で見かけることはほとんどない
野生動物の骨

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 何年か前のテレビ番組で、次のようなナレーションがあった。詳細は覚えていないので、少し違うかも知れないが、ある人が山で野生動物の骨を見つけた。彼はそれが何の骨か、すぐにわかった。なぜなら彼は登山が趣味で、山で野生動物の骨を見慣れていたからだ…と。
 このナレーションの原稿を書いた放送作家は、まず間違いなく山のことも野生動物のこともまるで知らない人だろう。山には野生動物がたくさん生息しているはずだ→だから登山を趣味にしている人は頻繁にその遺骸(=骨)も見ているはずだ→ということは何の骨かも見ただけでわかるに違いない…?
 そんなバカな! 登山歴45年の私ですら、山で野生動物の骨を見たのは数えるくらいしかない。しかも、頭骨ならわかる場合もあるが、それ以外の部分的な骨を見てわかるわけがない。専門家でも、すべての骨について即答はできないだろう。

 もちろん山には野生動物がたくさん生息しているのは間違いない。しかし野生動物の行動範囲と登山者が通る登山道の接点なんて、野生動物の行動範囲全体から見れば、ごくわずか。登山者が登山途中に野生動物の骨を見つけるということは、野生動物が登山道沿いで最期を迎える必要があるが、そんなことは確率として滅多にないということだ。ほかの野生動物がヤブの中から登山道や道路に引っ張り出してきたとか、そういうことでもない限り、目にする機会は極めて限られる。

 私が過去に見かけて撮影したものは、今のところ以下の写真くらいである。

関連情報→本サイト山岳記「何だ?コレ12



京都府南丹市・京都大学芦生研究林のトコッコ軌道上に散乱していた骨。ある程度の大きさがある動物だろうことは推察できるが、頭骨はなく、こんなバラバラの状態では、余計に何の骨かの判別は困難だ。骨の大きさから見て、シカ、サル、イノシシ、クマのいずれかだろうが、イエイヌの可能性もゼロではない。



兵庫県朝来市・朝来郡山ふるさと自然公園の管理道路で見かけた動物の腰骨と脊椎、大腿骨。落ちていたのは、この部分だけで、周囲にほかの部分はなかった。



北海道陸別町・北稜岳 斗満川登山口に続く奧斗満林道に落ちていた動物の骨。この例も腰骨と脊椎、大腿骨のみ。なぜか頭骨は欠けていることが多い。



上写真の骨のそばには毛皮の残骸もあった。骨の大きさと毛の色から考えると、エゾシカの可能性が高そうだが…。



日高連峰・神威岳登山口の神威山荘付近の道標上に置かれたヒグマの頭骨。付近のヤブの中から誰かが見つけて、置いたのだろう。



青森県西目屋村・白神山地の遊歩道沿いにあったカモシカの頭骨。カモシカの頭骨は、特徴的な角ですぐにわかる。付近にあったのはこの頭骨のみで、ほかの骨はなかった。

NEW

2023年12月28日、自宅そばの竹藪縁で落ち葉掃きをした時に見つけた動物の下顎の骨。あとで調べるとイノシシの下顎だった。奥歯以外の歯と牙(右端の丸い穴)も欠損しており、かなり古いものではないかと想像した。昔、付近では近所の人がイノシシを捕獲していたようなので(子供のころは大きな箱罠があった)、その頃のものかもしれない。もし、近年にイノシシが付近で死んでいたら、さすがに臭いで気づくと思う。



 
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