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理に適った作業手順に感心
ジガバチ

Ammophila sabulosa infesta
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 植物記「ジガバチソウ」をアップした日というのも奇妙な偶然だが、実家の居間で寛いでいると、すぐ下の砂地に大きな幼虫を抱えたジガバチが飛んできたのが見えた。どうするのだろうとジガバチの行動をじっくり観察してみて、感心したことを書いてみたい。

 ジガバチは、ほぼ一直線にあるポイントに向かい、幼虫を傍らに置いて、そばにある直径1センチほどの小さな窪地から小石を移動させ始めた。どうやら、そこに巣としてあらかじめ用意した穴があるようだった。いくつかの小石をどかすと、穴が出現。一度掘った穴を小石で隠すのも、ほかの生物に利用されないようにという意図があるとしか思えない。その穴の中に入ったと思ったら、すぐに出てきた。念のため内部を確認したというわけか。さて、どうやって幼虫を運び入れるのか、興味深く見守った。

 するとジガバチは、まず数センチ手前に置いてあった幼虫を穴の前に持ってきた。そして後ろ向きで先に穴に入り、穴の中から幼虫を引きずり入れた。幼虫を押して入れるよりも効率的ということを知っていたのだろうか? また地下には、幼虫を運び入れてもすき間を通って出られるだけの空間的な余裕があることを伺わせた。引きずり入れてすぐにジガバチは穴から出てきて、再び穴を小石で塞ぎ、どこかへ行ってしまった。最初にジガバチの姿を確認してから1分ほどのわずかな時間だ。

 それにしてもジガバチの手慣れた作業に感心してしまった。同じことを別の場所でも繰り返しているのかどうか知らないが、これって単にDNAに刷り込まれた進化の証…という言葉で片付けていいものなのだろうか。あまりに作業手順が理に適っていて、小さな外見を除けば、まるで人間がやっているように見えたほどだ。そして何より、幼虫を抱えたジガバチが迷わず小石で塞いだ穴の位置に一直線にやってきたことも不思議としかいいようがない。それはつまり穴の位置を正確に記憶していた証拠といえないか。
 ジガバチからすれば、かなり広いエリアであろう実家居間下の砂地に掘った小さな穴。人間ですら、一度掘った穴を塞いでしまえば、どこにあったのかわからなくなるのは間違いない。なんらかの匂いでマーカーしていたのか、それとも周囲の小石などの微地形を覚えていたのか。こうした行動を本能だけで説明できるとは思えない。人間が勝手に想像しているよりも意外と知能は高いのかもしれない。ジガバチの行動を観察して、そう感じた次第である。


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大アゴで挟んで幼虫を運ぶジガバチ。本文内容の時とは別の時に撮影。

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巣の穴に運び込もうとしているところ。



この写真は、別の時にやはり実家居間下の砂地で見かけたジガバチ。前脚で砂や小石を抱えて、幼虫を入れた穴を塞ごうとしているところ。


大アゴも使って小石を置くジガバチ。穴は完全に塞がれている。実はこの前にもちょっとしたことがあった。やはり幼虫を運んできたところで、せっかく捕獲した幼虫がアリに見つかった。するとジガバチは少し飛んではアリ一匹一匹を攻撃することを繰り返した。しかしアリを完全に追い払うことができず、なんとあっさり諦めて幼虫を放棄してしまった。もしかするとその背景には、産卵+ジガバチ幼虫の餌用として確保した幼虫に注入されたアリの蟻酸が、ジガバチ幼虫が餌とする上で好ましくないことを進化の過程で学んでいる可能性もあったりして…!?

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山で出会った動物について話題や体験談を紹介します。ここでは昆虫類や両生類なども含めて動物全般を広く扱います。

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