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クモを狩って産卵する
ベッコウクモバチ
Cyphononyx fulvognathus
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  昨日、勝手口の前で遭遇した光景である。あまり見かけない種類のハチが、大きなクモを運んでいた。クモはぐったりして微動だにせず。しばらく行動を観察すると、ハチはクモを咥えたまま、バックしながら、大きな段差さえものともせず、ある方向にどんどん進んでいく。やがてゴミため用に掘った、深さ40センチほどの穴に近づいた。その穴はほぼ垂直になっているが、ハチは自分よりも重いと思われる大きなクモを咥えたまま器用に下りていく。そして反対側の垂直の崖を登り返したところで、獲物のクモを置いて、今登ってきた崖を下りた。どうやら、その崖の途中に開いた穴が獲物を運び入れる予定の巣穴だったようで、その穴に入ってしばらくして出てきた。つまり、獲物を運び入れる前に穴に問題がないかどうか確認をしていたのだろう。

 穴から出たハチは獲物のところへ戻って再び咥えて崖を下りたが、途中で脚を踏み外して底まで落ちてしまった。すると獲物を置いたまま崖を登って別の穴に入りかけたが、すぐに巣穴ではないことに気づいたようであった。さらに少し上にある巣穴の入口まで来て、「ここだ」と確認したかのように、穴には入らず、底へ戻って再びクモを咥えて崖を登り、予定の巣穴にバックしながらクモを引き入れていた。

 ジガバチではないのは、最初に見てすぐにわかったが、同定はできなかった。そこで一連の行動をカメラに収めたあと、ネットで調べるとベッコウクモバチと判明。本州〜九州に棲息し、クモを狩って毒で麻酔した上で巣穴に運び入れて産卵する習性があり、孵った幼虫はそのクモを餌にして成長するという。

 ジガバチのページでも書いたが、こうした昆虫の能力も結構侮れない。途中で運ぶ方向を間違えたりしないということは、あらかじめ見つけておいた巣穴の位置をかなり正確に把握しているとしか思えない。ただ運び方とか、作業手順とか、理に叶っている部分とそうでもない部分が混在しているところは、やはり昆虫ともいえるが、それでも目の前で観察して、結構感心した次第だ。

関連情報→本サイト動物記「ジガバチ



自らよりも大きいクモを咥えるベッコウクモバチ。



これほど大きな獲物を咥えたまま、垂直の崖を上り下りしていた。

巣穴の確認を終えて、出てきたベッコウクモバチ


 
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