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日本産昆虫界の宝石
ハンミョウ

Cicindela chinensis
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 ハンミョウは、ハンミョウ科の甲虫。近づくと飛んで逃げるが、大抵は数メートル先に止まる。そこで再び近づくと、また逃げる。その繰り返しが、まるで道を教えているように見えるため「道教え」なんて別名もある。漢字では「斑猫」と書き、ほかの昆虫を捕らえる様子がネコを思わせることに由来するそうだ。まさかネコに由来した名前とは、実に意外!!

 それはさておき、実家では、昔は時折しか見かけなかったが、ハンミョウが生息しやすい環境が整ったと見えて、近年は普通に畑で見かけるようになった。
 体表面には大変鮮やかな色の金属光沢があり、以前からその美しさに魅力を感じて、ぜひ接写してみたいと思っていた。2年ほど前、ようやく機会が訪れる。実家の菜園で捕獲に成功し、身体の各部位を間近に観察してみたのだが、美しい色と緻密な作りに舌を巻いた。その時に撮影した写真を掲載しておこう。どうして、こんなにも鮮やかな色を選択したのだろうか。不思議としかいいようがない。

 


この写真のような砂地環境を好む。それにしても朱色、濃紺色、コバルトブルー色、黄緑色、黄色、白色からなる模様が、大変見事である。しかも配色と模様に一定のバランスを感じるが、これを単純に「自然のなせる技」と表現してしまっていいのだろうか。ちなみに色が異なる変異体も見つかっているそうだ。


この写真だけ最近撮影したもの。止まっている姿を横から見ると、こんな感じ。


体表面の美しさからは想像もできない極悪非道そうな顔。これじゃ、どう見ても「地獄からやってきたモンスター」と表現するしかないな。交差する大アゴも鋭く長い。


裏返して見ても、やはり美しい。しかも白い毛が、またスゴイ。関節の作りの見事さは、なにもハンミョウに限ったことはないが、写真下部あたりを見ると、まるで金型でプレスした金属パーツみたいだ。


腹部側面を覆う白毛。


芸術的な配色といえないか。


前脚内側には、ブラシ状の毛が生えている。おそらく捕獲した昆虫をしっかりと掴むためだろうが、一定の方向にびっしりと並び、縁には刺までも列を作っている。


同じく前脚の毛を角度を変えて撮影。節ごとに、しかも明瞭に区切って生えているのもスゴくないか。まるで意図して、あとからブラシを貼り付けたかのように見える。


以前、トップページのタイトル写真にも使った後脚のアップ写真。宝石のように輝く色。そこから突き出すように生えた白い毛の組み合わせは、身近な昆虫の形態とは思えないほどの意外性がある。





 
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