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気持ち悪いなんていわないで
ヤマナメクジ
Meghimatium fruhstorferi
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 梅雨時など、民家の庭先などに現れるナメクジとは違って、山にはヤマナメクジと呼ばれる別の種類が生息している。長野や新潟などのブナ林でよく見かけ、大きな個体では体長10cm近いものもいる。女性は苦手だろうが、カタツムリと同じく陸産貝類の一種で、殻のないカタツムリと思えばそれほど気持ち悪くもない。彼らとて、山の生態系を構成する大切な生物のひとつなのである。
 彼らは、ブナなどの幹に生えた地衣類を食べながら、ゆっくりゆっくり移動して行く。外敵に対しては、カタツムリのように殻の中に閉じこもることもできないから、ほとんど対策もなく、せいぜい目をひっこめるくらい。私もブナ林で出会ってもそっとしておくが、一度だけヤブコギの最中、つかんだ枝に張り付いていたことがあった。向こうもびっくりしただろうが、こっちもびっくり。堅いと思って握った枝の一部分が妙に柔らかかったからである。だが、庭先にいるナメクジと違い、結構肉質でしっかりしていたのが印象的だった(できることなら二度と触りたくはない)。
 また長野県の飯縄山や高標山では、ヤマナメクジとは異なり、明るいオレンジ色や肌色の体色をしたものも見かけた。ヤマナメクジとは明らかに別種と思えるが、私は名前を知らない。

関連情報→本サイト「フタスジナメクジ




関田山脈のブナ倒木を悠々と移動中のヤマナメクジ。小雨が降って湿っていたので、きっとゴキゲンなはず(笑)


尾瀬ヶ原の木道上で見かけたヤマナメクジ2態。はっきりしたことはわからないが、左の写真に見えている白い部分は交接器ではないかと思う。ヤマナメクジは雌雄同体で、通常は2個体で交接し、精子の交換が行われるが、自家受精も可能らしい。玉原で交接中のヤマナメクジを見たこともあるが、この個体の場合は自家受精の作業中なのだろうか。それとも交接後にもう一方の個体が去ってしまったあとなのか。また右もどういう状態なのか、まるで不明だが、半分くらいに縮こまって眼も引っ込めていた。体表面が大きくなるほど、水分も失われやすいと思われるので、乾燥に対する防御姿勢とも想像するが…。


交接中のヤマナメクジ。新潟県妙高市・斑尾高原にて(左)。身近な場所にいる外来種のチャコウラナメクジ(右)。


危険を察して目を引っ込めたヤマナメクジ(左)。飯縄山で見た別種その1。長さは約4センチ(中)。高標山で見た別種その2(右)は、高標山の林道上で見かけた。林道を下っていたところ、長さ10センチほどのミルクティー色の妙な形の物体が落ちているのに気がついた。しかしパッと見た瞬間は何かわからなかった。近づいて大きなナメクジということが判明して「うわ〜。デカッ!」と思わず声が出た。高標山周辺のブナ林ではヤマナメクジもよく見かけるが、こいつはどう見てもヤマナメクジとは違う。


先日(2007年8月)、朝一番に福島県の駒止湿原に行くと、駐車場のトイレ前にバカでかいヤマナメクジが這っているのを発見。メジャーで測ると、長さは何と18センチ。私の手と比較すると、その大きさがよくわかる(左)。♪君がゆく道は果てし〜なく遠い〜(右)。コイツが駐車場を縦断し終わるには、かなり時間がかかりそう。お盆休みだから駐車場もそろそろ混雑するだろう。すると車につぶされるかもしれない。仕方ねぇな。救助してやるか。木の枝で二つ折りのようにして拾い上げて、ヤマナメクジくんが向かおうとしていた草むらの中へ移動させた。枝で触ると、すぐに目をひっこめたが、移動させていると、どうも様子がおかしいと思ったのか。自分の置かれている状況を確認するかのように目を出していた。迷惑そうに身体をねじらせていたが、助けてやったんだからな。感謝しろよ。

 
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