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我が家の歴史で最も特筆すべき珍客
モクズガニ
Eriocheir japonica
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  まず最初に指摘しておくと、モズクガニではなくモクズガニである。モクズガニは、日本全国の河川や池沼、田んぼ、水路などの淡水域に生息するカニだが、繁殖の際には海に下るという。Wikipediaには、「様々な塩分濃度の環境に出現することは、モクズガニが非常に強力な体液(血リンパ)浸透圧調節能力を有することを意味している」とある。

 そんなモクズガニをなぜ取り上げることにしたのか。川でたまたま見かけて撮影したから…と思われそうだが、残念ながら違うんだよね。撮影したのは自宅。川じゃない。ということは川で採ってきたか、あるいは採ってきた人にもらったモクズガニを食べる前に撮影した? 残念ながら、それも違うよ。

 今月(2021年11月)、四国取材に出かける日の朝のこと。居間で朝食を食べていて、ふと外に目を移した時に地面に何か動くものがいた。ん!? なんだろう。ガラス窓を開けてびっくり。そこにいたのが、まさにモクズガニだった。えーーーーー!!!!!! なんでここにカニがいるんだ〜〜?????????

 甲殻類の知識はほぼゼロに等しいので、私はモクズガニとはわからなかった。ただ母はひと目見てモクズガニじゃないかといっていた。祖父が発電所に勤務しており、その発電用貯水池でモクズガニがたくさんとれていたので、よく知っていたのだ。

 それにしても川からもやや距離がある我が家にどうしてモクズガニがやってきたのだろうか? 大いなる謎である。近くにため池があり、そこから来たと考えるのが一番自然だが、ため池でモクズガニを見たことは少なくとも過去に一度もない。知らないうちに生息するようになっていて、夜行性のモクズガニが繁殖期を迎えて海に向かおうとため池から這い出したものの、ひと晩かけて、ようやく我が家に達するのがやっとだった…とか? それとも近所の家で食用に入手したモクズガニが、調理前に逃げ出してきたとか?

 モクズガニは、両ハサミを上げて威嚇するばかりで、おそらく聞いても答えてくれそうにないので、とりあえず珍客の姿を激写したあと、ため池付近で無罪放免してやった。モクズガニくん。海は遠いぞ、君の脚で向かうのはどう考えても無理だよ。

 それにしてもカニがうちにやってくるとは想像の域をはるかに越えている。山裾にある我が家には、過去にもいろいろなものがやってきたのは事実で、例えば幼稚園〜小学生の頃には、クサガメが来訪したことが何度かあるのだが、さすがにカニは初めてだ。現実は時として空想よりも、はるかに意外である。どこかで聞いたような気もするが、そう思わずにいられないね。

関連情報→本サイト「サワガニ



甲羅の前側縁(2時と10時の位置)に3つの突起がある。チュウゴクモクズガニでは、これが4つあるらしい。



マクロストロボで拡大撮影



威嚇するモクスガニ。この個体は♂のようだ。火バサミで挟むと、ハサミでつかんでくるが、その力が結構強かった。



 
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