Nature

私が取材先で体験したこと、感じたことなどを好き勝手に書いたものです。

植物記
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観光バスにも「お先にどうぞ」の気持ちがほしい


 人や荷物を乗せたバスやトラックなどは乗用車よりも慎重な運転になるから速度が遅く、片道1車線の道路では後に車が列を作るのはよく見られる光景である。運転者によっては道路沿いの駐車スペースに寄って後続車を先に行かせてくれることもあるが、観光バスがそういう配慮を見せることはごく稀だ。「お先にどうぞ」の精神がまるでない。追い越し禁止でなくても観光バスが数台並んで走っている後に付くと最後まで付き合うハメになる。なぜ観光バスにはそうした配慮に乏しいのか。要は自分のツアーを予定通りに進行させることが第一であり、急ぎの用があって後でイライラしている人のことまで考えるつもりはないということらしい。ちょっと車道の脇に寄って後続車を通すのにさしたる時間もかからないと思うのだが、観光バス運転手のみなさんは道を譲るのが何よりもお嫌いのようである。
 以前、上高地行き松本電鉄バスの運転手さんも同じことを云っていた。「我々は渋滞するとバスの運行にも支障が出るので頻繁に後続車に道を譲っていますが、観光バスはそんなこと一切しないから必ず金魚のフンのように車を引き連れて走ってきます。それが時に渋滞の原因にもなるんですよ」と。確かに上高地までの国道は山間部にぐねぐねとのびる道で、狭い箇所も多く追い越し禁止の片道1車線。しかも平日でも車の通行量もそれなりにあるから渋滞が起きやすい条件が揃っている。上高地行きバスにはよく乗車するが、確かにこの路線バスの後続車への配慮は気持ちいい。「こうでなくては」といつも感じる。
 自分のツアーさえ予定通りにすめばいい、観光バスの運転手みんながそう思っているから、それが元になって時には渋滞を作り出す。そして巡り巡って結局は自分の首を絞めることにもなる。そのことに早く気づいてもらいたいものである。後続車への配慮はまだトラックの方が優れている。私の印象としてはトラックは割とよく譲ってくれるように感じるが、観光バスに譲られたことはほとんどない。
 似たようなことは観光バス以外でも目にする。例えば交差点ではない片道1車線の車道で右折しようとしている車がいて、それを待つ車が後に何台も列を作っている。日常の生活でよく見る光景である。このような状況でも無視して走り抜ける対向車が多い。もちろん気づくのが遅れ、急停止もできないから結果的に無視してしまうこともあろう。だがすべての対向車が気づかないとは思えない。ちょっと止まって右折させてやる、そんな配慮は自分には無関係なのだろうか。渋滞の原因をなるべく作らないようにしたい、それが自分の希望でもあるし、多くのほかのドライバーの希望でもある。そのためには些細な配慮を実行する。より多くのドライバーがそう思うことで、巡り巡って自分の利益にもなる。私は親切というだけでなく、そういう観点から配慮するように心がけて運転している。
 渋滞というのは相当数の車が集中した時に例外的に発生するとは限らない。先程まではスムーズに流れていた道路に1台の車が停車したことが引き金になることもあるし、渋滞の名所でもわずか5%通行量が減るだけで渋滞しなくなるそうだ。
 高速道路渋滞の原因のひとつには「サグ(くぼ地)渋滞」がある。勾配に気づかないゆるやかな上り坂にさしかかると自然にスピードが落ちても気づかず、後続車が少しブレーキをかける。すると後の車はさらに車間距離を空けようと大きくブレーキ。それがきっかけとなって次々に車の流れが滞るようになって後の方では渋滞が発生する。渋滞というのはまさか渋滞するほどには思えない小さなことが原因で起こる。だからドライバーの些細な配慮は十分意味がある。
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