Nature
山岳記
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山の送電線 新潟県・平標山ほか

撮影年月日:2000年7月11日

 山では尾根を越えてのびる送電線をよく見かけるし、登山コース上で鉄塔と出会うこともしばしば。景観的には送電線はない方がいいに決まっている。だけど、そうはいっても我々もその恩恵に与っているのも事実。できるだけ景観や環境に配慮して立ててほしい、くらいのことしかいえない。

 昔、このような山岳地での鉄塔工事に携わった経験がある人から話をきいたことがある。やはり、その工事はかなりの重労働なのだそうだ。現場は道路もない尾根の上。そこに強風でも倒れないようにしっかりと基礎を築き、鉄塔を組み上げていくわけだから簡単な作業であるはずもない。しかも完成したあとも定期的に点検する必要もある。だから送電線には登山道から分岐させたり、あるいは新たに道をつけたりして巡視路が設けられている。大抵は標識によって登山道と区別できるが、登山者がほとんど入らない山では、時に紛らわしいこともある。

 逆に送電線の存在が登山に役に立つことといえば、ランドマーク代わりに使えることだろうか。国土地理院の地形図はもちろん、市販の登山地図には送電線が記載されているから、もし登山道の真上に送電線が見えたら、地図上のふたつの線の交点が、現在地点というわけ。ただ新しく送電線が並行して引かれていて、それがまだ地図に反映されていないこともあるから、周辺にも送電線がないかどうか、よく確認した方がいいかもしれない。



谷川連峰・平標山の登山コース上に設置された送電線。上の方はガスで霞んでいる。登山コースだからというわけでもないだろうか、よく見れば支柱には「ねずみ返し」ならぬ「人間返し」部材が取り付けられ、登れないようになっているのもわかる。それにしても、これほどの巨大な構造物を山岳地に建設する技術もスゴイな…と改めて感心せざるを得ない。


 
その同じ鉄塔の快晴時の写真(左)。そこから延々とのびる送電線(右)。撮影時期は異なる。


 
鉄塔の足元は平坦とは限らない。斜面のまま基礎が築かれていることも多い。長野県・雨引山(左)。鉄塔の番号を示す標識(右)。登山コース上にいくつもの鉄塔が並んでいる場合は、登山ガイドで説明するのに鉄塔の番号が役に立つことも。例えば、場所がわかりにくい分岐点を示すのに「No.39鉄塔のすぐ先で、分岐を右に曲がる」というように説明すると、ポイントが断然把握しやすい。



北アルプス・飛越新道と交差する送電線鉄塔は、Y字型だった。岐阜県飛騨市。



送電線鉄塔の下をくぐる登山道。静岡県函南町。このような森林地帯を抜ける登山道では、見晴らしがきかない上にGPSもズレることが多く、ポイントの特定はしにくいものだが、送電線鉄塔があれば、あとから国土地理院の地形図で送電線と登山道の交点を探せばよく、GPS機器がなくともこの場所を特定できる。





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